2026年5月11日、名古屋市教育委員会は、同年4月に市立全小・中学校における不登校児童生徒の学習支援として株式会社すららネットのAI教材「すらら」を導入したと発表した。ICTを活用し、場所に依存しない学習環境の整備を進める方針である。
名古屋市、全小中で不登校支援にAI教材導入
名古屋市教育委員会は2026年4月より、市立の全小・中学校を対象にAI活用型アダプティブ教材「すらら」を不登校児童生徒向けに導入した。教室での学習が難しい子どもに対し、自宅や校内の別室などから継続的に学べる環境を提供する狙いがある。
背景には不登校児童生徒数の増加がある。市内では2025年度に6,000人を超え、従来の「学校復帰」を前提とした支援だけでは対応しきれない状況となっている。これを受け名古屋市は2025年3月に「なごやハートプラン」を策定し、「社会的自立」を最上位に据えた支援へと方針転換を進めている。
同プランでは校内の居場所づくりや教育支援センターの機能強化に加え、メタバース空間を活用したオンライン支援など、多様な学びの選択肢を整備している。「すらら」はその中核ツールの一つとして位置づけられ、個々の理解度に応じて学習内容を調整しながら進行できる点が評価された。
さらに学習履歴や進捗データの蓄積により、教育現場が児童生徒の状況を可視化できる仕組みも整備されている。これらのデータは、ICT学習の出席扱いを判断する際の参考資料としても活用される見込みであり、学習の継続を社会的評価へと接続する役割を担うと考えられる。
学びの多様化が加速 包摂型教育の鍵となるか
今回の取り組みは、不登校支援における「場所依存からの脱却」を象徴する動きといえる。AI教材の導入により、従来の教室中心の教育から個別最適化された分散型学習環境への転換が進む可能性がある。
特に学習進度や理解度に応じた最適化は、学び直しや基礎定着を必要とする層にとって大きな利点となる。対面授業に戻る前段階としての「緩やかな接続」を実現する手段としても有効であり、心理的負担の軽減にも寄与すると見込まれる。
一方で、ICT活用の拡大には課題も存在する。端末や通信環境の格差、自己管理能力への依存、対面コミュニケーションの不足といったリスクは依然として無視できない。また学習データの扱いに関するプライバシー保護の観点も今後の制度設計において重要になるだろう。
それでも、名古屋市の取り組みは「誰一人取り残されない学び」の具体化に向けた一歩である。今後他自治体への波及や制度的な標準化が進めば、日本の教育モデルそのものが再定義される可能性もあると言える。
関連記事: