Web3コンサルティング企業のPacific Metaが、日本円ステーブルコイン「JPYC」を活用した資産運用を開始したと発表した。
法人資金の「保有・運用・決済」を一体化する新たな金融モデルとして、国内ステーブルコイン活用の実証を進める。
JPYCで法人資金運用 オンチェーン財務運用を検証
Pacific Metaは2026年5月1日、自社資金を用いたJPYCの運用を開始したと発表した。
同社はステーブルコインの真価を、従来は分断されていた企業資金の「保有」「運用」「決済」を、より連続的かつ一体的に扱える点にあると捉えているという。
そのため今回の取り組みでは、ステーブルコイン(※1)を単なる送金手段ではなく、企業資金を運用し、将来的な決済活用にもつなげていくための新しい手段に位置づけている。
背景には、日本国内で進む制度整備がある。
2023年施行の改正資金決済法によって、電子決済手段としてのステーブルコインに関する法的枠組みが整備された。
さらに2025年には日本円連動型ステーブルコイン「JPYC」の発行が始まり、国内における法定通貨建てステーブルコインの実装が現実となっている。
こうした中、同社は、法人の運転資金や余剰資金をJPYCとして保有し、そのままオンチェーンレンディングプロトコル(※2)で運用する構想を示した。
従来のように銀行口座へ滞留させるのではなく、24時間365日稼働するブロックチェーン上で継続的に資金を活用する形となる。
また、必要時には運用中の資金を直接引き出し、そのまま決済へ充当するモデルも想定している。
「運用を止めて支払う」のではなく、「運用しながら支払う」という法人財務の実現を目指す考えだ。
なお、運用規模や具体的な運用先プロトコルについては現時点で非開示としている。
※1 ステーブルコイン:法定通貨などと価格連動するよう設計されたデジタル通貨。価格変動を抑えながら、送金や決済に利用できる特徴を持つ。
※2 オンチェーンレンディングプロトコル:ブロックチェーン上で動作する貸借サービス。暗号資産やステーブルコインを預け入れ、利回りを得られる仕組みを指す。
法人財務DX加速へ、安全性と制度整備が課題か
今回の取り組みは、国内企業におけるステーブルコイン活用が、実験段階から実務運用へ移行し始めたことを示す事例と言える。
銀行営業時間や国境に縛られない資金管理が可能になれば、Web3企業だけでなく、将来的には一般企業の資金効率改善にも波及する可能性がある。
特に注目できるのは、「保有・運用・決済」が一体化する点だ。
従来の法人財務では、銀行預金、資産運用、決済システムが分断されていた。
しかしステーブルコイン基盤が普及すれば、企業資金を常時運用しながらリアルタイム決済へ接続する新しい財務モデルが現実味を帯びる。
一方で、リスクも小さくないだろう。
オンチェーン金融では、スマートコントラクト(※3)の脆弱性やハッキング被害が課題となり得る。
海外ではDeFi関連サービスへの攻撃事例も発生しているため、企業資金を預けるインフラとして慎重な安全性検証が不可欠になるはずだ。
それでも、今回の動きは日本企業の財務DXを加速させる契機となりうる。
Pacific Metaは、今後得られた知見をエンタープライズ向けオンチェーン金融支援へ還元するとしているため、国内ステーブルコイン市場拡大への影響にも注目したい。
※3 スマートコントラクト:契約内容をブロックチェーン上で自動実行する仕組み。利便性が高い一方、プログラム上の欠陥がリスクとなる場合もある。
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