株式会社日立製作所と株式会社日立ハイテクは、産業向けエッジAI半導体を開発したと発表した。最先端GPU比で10倍以上の電力効率を実現する。
装置内でAI処理を完結する新半導体
日立と日立ハイテクは、産業分野向け次世代ソリューション「HMAX Industry」を支える基盤として、エッジAI半導体(※1)を開発したことを、2026年4月24日に発表した。
製造設備や検査装置、産業ロボット、物流機器、ビル・エネルギー設備など、幅広い産業プロダクトへの組み込みを前提としている点が特徴である。
本半導体は、画像・音・振動といった多様なセンサーデータを装置内でリアルタイムに解析できる。実機データを用いた評価では、軽量AIモデルとの組み合わせにより、最先端GPU比で10倍以上の電力効率を確認したという。
背景には、エッジAI導入における電力や設置スペース、処理負荷の制約がある。これに対し日立は、CNN(※2)とTransformer(※3)を組み合わせた軽量モデルを採用し、高精度と省電力の両立を図った。
また、半導体検査分野では、従来複数枚の画像を必要とした高精度測定を単一画像のAI処理で代替できる可能性が示され、検査工程の高速化と装置負荷の低減につながる見込みだという。
※1 エッジAI半導体:端末機器に搭載され、クラウドを介さず現場でAI推論を実行する半導体チップ。低遅延・省電力が特徴。
※2 CNN:画像の特徴を抽出し分類する深層学習モデル。外観検査などに広く用いられる。
※3 Transformer:データ内の重要部分に着目して処理するAIモデル。画像解析や自然言語処理で活用される。
現場完結型AIの利点と導入課題
今回の技術は、クラウド依存から脱却し「現場完結型AI」への移行を加速させる可能性がある。データをその場で処理し、通信遅延を抑えられることは、リアルタイム性が求められる製造や物流において大きな優位性を持つと考えられる。
また、電力効率の向上はエネルギーコスト削減や脱炭素にも寄与し、持続可能な運用を支える要素となりうる。
一方で、専用半導体であるがゆえの制約も無視できない。用途特化型の設計は柔軟性に課題を残しやすいため、モデル更新や用途変更には追加対応が必要になるだろう。さらに、既存設備への組み込みや初期導入コストも、普及を左右する現実的なハードルとなりそうだ。
それでも、産業機器そのものが知能化する流れは不可逆と考えられる。
今後、軽量AIモデルやソフトウェアと組み合わせた実装が進めば、製造業のみならず、物流やエネルギー分野にも展開が広がるかもしれない。
フィジカルAI(※4)を中核とした産業基盤の再構築が進む中で、本技術はその重要な一角を担う存在になる可能性がある。
※4フィジカルAI:実世界の装置やロボットに組み込まれ、物理環境で判断や制御を行うAIの概念。
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