2026年4月20日、日立製作所は、AIを活用したエネルギー管理システムをトヨタ自動車東日本の岩手工場に導入したと発表した。電力需給の最適化と再生可能エネルギー活用を自動化し、工場運営の効率化と脱炭素の両立を図る。
AIが電力需給と再エネ制御を一体化
日立製作所が納入したエネルギー管理システム「EMilia」は、フィジカルAI(※)を中核技術とし、2026年4月から岩手工場で稼働を開始した。電力需要の予測から再生可能エネルギーの利用計画、さらには実運用における制御までを一体的に自動化する点が特徴となる。
同システムは、気温や湿度といった気象情報に加え、5分単位の生産計画や過去の稼働実績を学習し、高精度な需要予測を実現する。予測結果に基づき、太陽光や水力などの発電量を踏まえた最適なエネルギー活用計画を立案し、現場の稼働状況を監視しながらリアルタイムで補正を行う仕組みだ。
特に再生可能エネルギーの変動に起因する需給ギャップへの対応では、分散型エネルギーリソースをAIが自律制御することでインバランスを最小化する。試運転ではインバランス率約1%を達成しており、従来の人手依存型運用と比較して高い精度を示した。
また同工場では、地域と連携したマイクログリッドの運用も進められている。平時は再エネの地産地消とピーク抑制を行い、災害時には蓄電池を活用して地域へ電力供給する自立運転へ移行する設計となっている。
※フィジカルAI:現実世界の物理法則や環境条件をモデル化し、実データと組み合わせて予測や制御を行うAI技術。製造やエネルギー分野での高度な最適化に活用される。
脱炭素と効率化の両立 普及の鍵は運用設計
今回の取り組みは、製造業におけるエネルギー運用を大きく変える可能性を持つ。AIによる需給予測と制御が高度化すれば、電力コストの最適化と脱炭素の同時達成が現実的となり、特にエネルギー多消費産業においては競争力強化につながる可能性がある。
さらに、マイクログリッドとの連携により、災害時の事業継続性や地域レジリエンスの向上が期待される点も注目される。企業設備が地域インフラの一部として機能する構造は、分散型エネルギー社会への移行を後押しする契機となり得る。
一方で、導入には課題も伴う。高精度なAI運用には継続的なデータ整備やチューニングが求められると考えられ、初期投資や運用負荷が障壁となる可能性がある。また、自動制御への依存度が高まることで、異常時の対応や責任分界の設計がより重要になるとみられる。
今後はデータセンターや商業施設などへの展開が進む見通しだ。エネルギー管理がAI主導へと移行する流れが進めば、企業の設備投資や運用戦略そのものに変化をもたらす可能性がある。
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