総務省は国内の「地域共有型エッジAI実証タイプ」で2件の実証事業を選定したと発表した。
国際電気通信基礎技術研究所が施設案内、NTTドコモが機能を簡素化したデバイスの活用をテーマに、エッジAIの社会実装に向けた検証を進める。
ATRとドコモがエッジAI活用を実証
総務省は2026年9月7日、「地域社会DX推進パッケージ事業」の一環として実施する「地域共有型エッジAI実証タイプ」の選定結果を公表した。
総務省から事業を請け負うサイバー創研が7月1日から31日まで公募し、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)とNTTドコモの2社を選定している。
同事業は、人口減少や少子高齢化、経済構造の変化などを背景に、デジタル技術を活用して地域課題の解決を支援する取り組みである。
総務省は地域社会DXを通じた省力化や地域活性化を進め、デジタル実装の好事例を創出し、全国での早期実用化につなげることを目指している。
ATRは、エッジAI(※)を活用したロボットやCGの「サイバネティックアバター」による施設案内サービスを実証する。
AIが定型的な案内を担当し、必要な場面では人が遠隔介入する仕組みだ。
クラウドAI、MEC内で処理を完結する構成、MECとクラウドを組み合わせる構成の3方式を比較し、応答遅延や回答品質、利用者の体感品質への影響を定量的に検証する。
一方、NTTドコモはローカル5Gやミリ波、Wi-Fiなどを利用できる環境を構築し、複数の無線アクセス方式からエッジAIを利用する際の性能を調べる。
具体例として、ウェアラブル端末など処理能力を抑えたデバイスのAI処理をエッジサーバーへ移す実験を行い、産業分野でのユースケース創出に向けた検証を進める。
※エッジAI:端末の近くにあるサーバーなどでAI処理を実行する仕組み。クラウドへの通信量や遅延を抑えやすい。MECは通信網の利用者に近い場所へ計算資源を配置し、低遅延な処理を可能にする技術である。
低遅延化と端末簡素化が普及の鍵に
今回の実証で注目されるのは、AIモデルそのものの性能だけでなく、「どこで処理するか」と「どの通信方式を使うか」を社会実装の観点から検証する点だ。
施設案内では応答速度が利用者の体感に直結するため、クラウドへの依存を減らして処理を利用者の近くへ配置できれば、より自然な対話サービスにつながる可能性がある。
また、AI処理をエッジ側へ移せれば、端末側に高い演算性能を持たせる必要性を抑えられる。
端末側に求められる演算性能を抑えながらAIサービスを提供できれば、ウェアラブル端末などへのAI活用の選択肢が広がると考えられる。
一方で、実用化には通信環境ごとの性能差や、クラウドとエッジを組み合わせた際の運用方法を整理する必要がある。
地域によって利用可能な通信インフラも異なるため、一つの構成だけで全国へ展開できるとは限らない。
今後、今回の実証を通じて用途ごとに適した処理配置や通信方式が整理されれば、エッジAI導入時の判断材料が明確になる。
実証成果を再利用しやすい形で蓄積できるかどうかが、個別実証にとどまらず、複数地域や産業分野へ横展開していくうえで重要になるだろう。
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