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富士通の「AI時代サイバーセキュリティ戦略」を解説!減速防御・4つのサブモデル・Nerve Centerの技術的要点

PlusWeb3 編集部
PlusWeb3 編集部 Web3・AI専門メディア

富士通株式会社は2026年8月26日、AI時代の高度なサイバー攻撃に対応する新たなサイバーセキュリティ戦略を発表しました。

生成AIの悪用による攻撃の高速化・高度化が進む中、従来の「100%侵入を防ぐ(Prevent)」という境界型防御だけでは限界を迎えています。本記事では、公式発表に基づき、「サイバー防衛ライフサイクル」「減速防御」、4つのサブモデル、AI連携基盤(Cyber Nerve System)、組織体制(Cyber Security Nerve Center)などの技術的ポイントを網羅的に解説します。

1. 概要と背景:なぜ「サイバー防衛ライフサイクル」が必要なのか

企業のIT環境やサプライチェーンが複雑化する中、生成AIを用いた自動化攻撃やゼロデイ攻撃の増加により、従来の「侵入を未然に防ぐ」防御戦略は立ち行かなくなっています。

これに対し富士通は、セキュリティを単なる一運用の段階にとどめず、戦略立案・設計・開発から実装・運用・評価・改善までを一貫して回す「サイバー防衛ライフサイクル」の構築を提唱しました。

2. コア概念:「減速防御(Delayed Defense)」とは

「減速防御」とは、100%の侵入防止を前提とせず、システム内での攻撃者の行動や進行を意図的に遅延(減速)させることで、防御側に時間的優位を生み出すセキュリティ思想です。

比較項目従来の防衛思想減速防御(Delayed Defense)
前提条件境界で侵入を100%阻止する侵入されることを前提とする
主な目的通信・アクセスの即時遮断攻撃の遅延・時間稼ぎと観測・分析
技術的アプローチFW/IPSによるアクセス拒否多層権限隔離、ハニーポット配備、時間稼ぎの設計

攻撃者の横移動(Lateral Movement)を遅らせることで、その間にテレメトリ(観測データ)を収集し、検知・隔離・追撃のための時間的猶予を確保します。

3. 防衛運用を構成する「4つのサブモデル」

富士通が定義した「Fujitsu Cyber Defense Model」は、システムの設計・構築・運用における判断基準となる4つのサブモデルで構成されています。

  • Fujitsu Cyber Defense Domain Model(ドメインモデル)

IPアドレスや機器種別ではなく、「業務上の役割(Capability/Role)」に基づいて防衛対象を定義。監視カメラや医療設備などの物理領域(OT/IoT)も一元的に補足します。

  • Fujitsu Cyber Defense Philosophy Model(フィロソフィーモデル)

「減速防御」をはじめとする、攻撃の観測・検知を前提とした防衛・運用の基本思想。

  • Fujitsu Cyber Defense Relationship Model(リレーションシップモデル)

グループ会社、マルチクラウド、パートナー企業、API連携など、サプライチェーン全体の依存関係と防衛責任(責任範囲)を明示・管理。

  • Fujitsu Cyber Defense Proximity Model(プロキシミティモデル)

攻撃者が最重要データ(最終目標)へ達するまでの距離(Proximity)に応じた防衛活動の整理と、対策・投資の優先順位付けを行います。

4. Shift-Leftと自律的改善を支える基盤・AI機能

セキュリティ運用の高度化およびShift-Left(開発段階からのセキュリティ適用)を実現するため、以下の技術基盤やAI機能が展開されます。

  • Shift-Left Security: 設計・コード記述段階での自動脆弱性評価およびセキュアアーキテクチャの適用(DevSecOps)。
  • Cyber Nerve System: 防衛活動全体からリスクデータやログ(テレメトリ)を感知・観測・可視化し、現場の自律的な改善サイクルを駆動する基盤。
  • 高性能AIの活用:AIを活用した自動・高度な脆弱性診断
  • AI脅威ハンティング: ログや情報をAIで能動的に分析し、潜伏する脅威や攻撃の兆候を探索。
  • AIレッドチームオペレーション: ペネトレーションテストや疑似攻撃の自動化・高度化。

5. 組織体制と推進アプローチ(Nerve Centerとカスタマーゼロ)

戦略の実効性を高めるため、富士通社内では実践的な組織体制と検証プロセスが導入されています。

  • Cyber Security Nerve Centerの設立

研究所、サービス開発、ミドルウェア、デリバリー部門を結集した約100名規模のバーチャル組織。観測データや専門知見を集約し、経営陣への報告・提言や戦略の横断的推進を行います。

  • カスタマーゼロ(自社検証)

富士通自らの環境を「最初の顧客(Customer Zero)」として最新のAI防衛機能を先行検証・実践し、得られたデータや知見を元にサービス化・外部展開を行います。

  • 高度人材育成

「セキュリティマイスター」制度等を通じ、収集された攻撃データやログを社内教育に還元し、ホワイトハッカーやセキュリティアーキテクトを育成します。

6. メリットと導入上の課題(懸念点)

  • 期待されるメリット
    • 経営層の迅速な意思決定支援と、サプライチェーン全体をカバーする統合防衛。
    • 攻撃発生を前提とした「減速防御」により被害拡大を防ぎ、事業継続性(BCP)を向上。
  • 想定される課題・懸念点
    • 導入に向けた自社環境の整理や人的リソースの整備が必要。
    • 特に中小規模の企業においては、初期投資や運用体制構築のハードルが課題となる可能性。

7. まとめ:今日から現場で意識すべき実践ポイント

富士通の発表から、インフラ・開発・運用エンジニアが即座に現場のシステム設計・運用に取り入れられるアクションは以下の通りです。

  1. インフラ/セキュリティ設計: 単なる境界ブロックにとどまらず、ネットワークセグメンテーションやハニーポット等で攻撃者の進行を遅らせる「減速(時間稼ぎ)」の構造を設計する。
  2. アクセス制御・IAM実装: IPアドレス固定ではなく、「どの業務権限を守るべきか(Domain)」、「重要データとどの程度近いか(Proximity)」に基づき権限ポリシーとアラート感度を定義する。
  3. DevOps/SRE運用: CI/CDパイプラインへのセキュリティテスト組込み(Shift-Left)を進めつつ、ログ(テレメトリ)を集約可視化して自動的に改善を回すサイクルを構築する。

参考リンク

富士通 ニュースリリース: AI時代の企業のサイバー防衛ライフサイクルを実現するサイバーセキュリティ戦略を策定

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