2026年9月3日、東京都の株式会社日立製作所は、社会インフラ向けAIソリューション群「HMAX by Hitachi」の拡充を発表した。データセンター運用やサイバーセキュリティ、現場知見のデータ化を支援する新ソリューションを追加し、フィジカルAIによる社会インフラの自律運用と最適化を加速させる。
フィジカルAI活用を支える基盤を強化
日立は社会インフラをAIで革新する「HMAX」のラインアップを拡充し、新たに「HMAX Data Center」「HMAX Cyber」「HMAX Data Fabric」「HMAX AI Operations」の提供を開始した。これらは個別業務向けだけでなく異なる分野や既存システムを横断的につなぎ、フィジカルAIの社会実装を支える共通基盤として位置付けられている。
背景には設備やシステムの増加に加え、労働力不足や熟練技術者の減少といった社会インフラを取り巻く課題がある。フィジカルAIを現場で活用するには多様な現場データや熟練者の暗黙知をAIが理解できる形で整理・統合し、安全に運用できる基盤やデータセンターが不可欠となる。日立は長年培ってきたIT、OT※、プロダクト分野の知見を生かし、これらの課題解決を支援する構成を整えた。
具体的には「HMAX Data Center」がデータセンター設備の統合監視や障害分析、運用改善を支援するほか、「HMAX Cyber」はAIを活用した24時間365日の監視や事業継続支援を提供する。また「HMAX Data Fabric」と「HMAX AI Operations」は現場知識を体系化し、AI活用から運用までを一気通貫で支援する役割を担う。
※OT:Operational Technology(制御・運用技術)の略。工場や社会インフラなどの設備を制御・監視する技術で、ITと連携することでAIによる現場運用の高度化が期待されている。
AI導入拡大で運用効率向上へ 知識整備が成否を左右
今回の拡充はフィジカルAIを個別システムではなく、社会インフラ全体へ広げるための土台づくりという意味合いが強い。データセンターの運営やサイバーセキュリティ、現場データの管理を個別最適ではなく横断的に統合できれば、設備管理の効率化や障害対応の迅速化、人材不足の緩和につながる可能性がある。
一方でフィジカルAIの性能は学習データや知識基盤の質に大きく左右される。現場ごとに異なる設備構成や運用ノウハウを整理し、AIが理解できる形で継続的に蓄積・更新する仕組みが欠かせない。技術導入だけでなく現場とAIを結び付ける運用体制の構築も重要になるだろう。
日立は今後もHMAXのラインアップを拡充し、社会インフラ全体を自律的に制御・最適化する「OS」へ進化させる方針を示している。フィジカルAIの活用領域が広がる中で共通基盤を軸に異なる分野のデータやシステムを連携させる取り組みは、インフラ運営の在り方を変える重要な一歩となりそうだ。