国際自然保護連合(IUCN)は、世界のサンゴ礁生態系の96%が、2075年までに崩壊するリスクが極めて高い「深刻な危機」に分類されたと発表した。
気候変動による海水温の上昇が主因で、海洋生物の多様性や沿岸地域の経済活動への深刻な影響が懸念される。
世界127生態地域を評価、96%が深刻な危機
2026年10月22日、IUCNは世界のサンゴ礁生態系を対象とした初の地球規模の評価結果を公表した。
熱帯・亜熱帯の127生態地域に広がる、計18万8,362平方キロメートルの浅海域のサンゴ礁を調査したものである。
評価では、将来の気候予測を含めた結果、対象となる生態系の96%がIUCN生態系レッドリスト(※)の最高危険度である「深刻な危機(Critically Endangered)」に分類された。
グレートバリアリーフや東南アジアのコーラル・トライアングル、紅海なども該当する。
最大の要因は、気候変動に伴う海水温の上昇だ。
海洋熱波による大規模な白化現象がサンゴの死滅を引き起こしており、評価には今世紀末までに大気の平均気温が2.7度上昇すると予測するIPCCの中間的なシナリオが用いられた。
一方、過去50年間の観測結果だけで判定した場合、最高危険度に該当する割合は世界全体で24%、東アジアでは20%にとどまる。
将来の温暖化が、生態系の崩壊リスクを大きく押し上げていることが分かる。
主要魚種の過剰漁獲も深刻な脅威となっている。
藻類を食べる魚や捕食魚の減少によって生態系の均衡が崩れる問題は、サンゴ礁生態系の63%に影響を及ぼしており、熱ストレスからの回復力を低下させる要因にもなっている。
こうした複合的な環境負荷は、海洋生態系だけでなく、人間社会にも影響を及ぼす恐れがある。
サンゴ礁は海洋魚類種の約4分の1を支え、漁業や養殖業、沿岸観光にも重要な役割を果たす。
その機能が失われれば、生物多様性だけでなく、沿岸地域の経済や暮らしにも影響が広がりかねないとした。
※IUCN生態系レッドリスト:国際自然保護連合が、生態系の崩壊リスクを科学的に評価する国際的な枠組み。過去の変化や現在の状態、将来予測などを基に危険度を分類する。個別の生物種の絶滅リスクを評価する「絶滅危惧種レッドリスト」とは異なる。
排出削減と地域保全の両立が課題に
今回の評価は、サンゴ礁の保全において、地球規模の気候変動対策と地域ごとの環境管理を組み合わせる重要性を示している。
特に、海水温の上昇が続けば、地域の保全活動によって一時的に生態系が回復しても、再び大規模な白化現象に見舞われる可能性がある。
温室効果ガスの排出削減を進めることが、長期的な保全の前提条件になると考えられる。
一方、各地域で実施できる対策にも意義がある。
海洋保護区の拡大や水質汚染の防止、持続可能な漁業管理を進めれば、サンゴ礁にかかる負荷を軽減し、熱ストレスからの回復力を維持・改善する効果が期待できる。
重要なのは、今回の96%という数字が、すでに崩壊したサンゴ礁の割合ではなく、将来の気候変動を考慮したリスク評価である点だ。
現時点では多くのサンゴ礁が残されており、保全対策によって被害を抑える余地はある。
しかし、対策が遅れれば生態系の回復機会はさらに狭まりかねない。
各国が排出削減目標を具体的な行動につなげ、地域の環境負荷を軽減する取り組みを継続できるかが、サンゴ礁の将来を左右するだろう。
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