NTT、NTT-ME、NTT e-Drone Technologyは、無線区間の遅延揺らぎを低減する技術を開発し、約60km離れた拠点間で遠隔ドローン操縦を実証したと発表した。
国内の点検業務では、人手不足を背景に、現地派遣を減らす手段として遠隔点検技術の活用が検討されている。
60km遠隔操縦で映像乱れ低減
NTT、NTT-ME、NTT e-Drone Technologyの3社は2026年5月14日、無線区間で発生する遅延揺らぎを低減する技術を開発し、約60km離れた拠点間で遠隔ドローン操縦環境を構築して実証したと発表した。
実証では、ローカル5GとフレッツVPNを介し、操縦者へ安定して映像を伝送しながら遠隔操縦できることを確認した。
実証環境では、福島県南相馬市のロボットテストフィールドにドローンを配置し、福島県郡山市から操縦を行った。
直線距離で約60km離れた2拠点をフレッツVPNで接続し、無線区間にはローカル5Gを用いた。
操縦者は、ネットワークを通じて伝送されたカメラ映像を見ながら、遠隔地からドローンを操作した。
実証の背景には、日本国内で深刻化する労働力不足がある。インフラや設備の点検業務でも人手確保が課題となるなか、現地派遣を伴わずに作業を実施する手段として、ドローンを用いた遠隔点検が検討されている。
無線区間では、上り通信と下り通信が同じ周波数帯域を共有することや、無線品質低下時の再送制御により、パケットの遅延に揺らぎが発生する。
これが映像乱れにつながり、操縦精度を下げる課題となっていた。
今回の実証では、高負荷な映像伝送時に伝送時間全体の12%で映像乱れが検出されたが、技術適用後は5%に低減した。
また、南相馬での目視操作で平均35秒を要した移動を、郡山からの遠隔操作では平均32秒で完了した。
操縦を中断することなく同程度の時間で移動できたことから、操縦に影響のない映像品質を確認したとしている。
遠隔点検の実用化を進める基盤に
今回の実証は、遠隔点検を実務に近づけるうえで重要な一歩になるだろう。
ドローン操縦では、操縦者が映像を見て瞬時に判断するため、映像の遅延や乱れは作業品質に直結する。映像品質が安定すれば、遠隔地からでも現場に近い感覚で状況を把握しやすくなるため、危険な場所での点検を人が直接担う必要性を減らせるはずだ。
さらに、熟練した操縦者や点検担当者が現地へ移動しなくても複数拠点を支援できるため、人手不足への対応策としても有効性があると考えられる。
一方で、実用化のためには課題もありそうだ。今回の実証はローカル5GとフレッツVPNを組み合わせた環境で行われているが、実際の現場では電波状況、建物構造、通信設備、運用体制がそれぞれ異なる。
安定した遠隔操縦を継続的に行うには、現場ごとの通信設計や保守体制、操縦時の安全ルールを整える必要があるだろう。
今後は、ドローンだけでなく無人航空機やロボット操縦にも応用が広がる可能性がある。
映像品質を安定させる技術は、遠隔作業を試験的な取り組みから日常的な業務手段へ移す基盤になりうる。
点検、保守、警備、災害対応などの分野で活用が進めば、人が現場へ行くことを前提とした業務設計そのものが見直されそうだ。
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