2026年4月28日、福島県白河市はAIスタートアップのZIAIと連携し、「白河市こころのAI相談窓口」の実証実験を開始した。24時間365日利用できる傾聴型AI(※)を活用し、若年層や就労世帯など従来支援につながりにくかった市民への相談体制強化を図る。福島県内自治体では初の導入事例となる。
白河市、24時間対応の傾聴AIを導入
白河市が開始した「白河市こころのAI相談窓口」は、スマートフォンやパソコンから利用できるチャット型相談サービスである。実証期間は2026年4月28日から7月28日までで、市民は24時間いつでもアクセス可能だ。
このシステムでは、臨床心理士や言語学者が監修した傾聴AIが利用者の悩みを受け止め、対話を通じて不安やネガティブ感情の軽減を支援する。さらに、相談者が同意した場合には、市の「福祉まるごと相談窓口」へ内容を共有し、人による支援へ引き継ぐ仕組みも備える。
導入の背景には、自治体相談窓口の構造的課題がある。白河市では、電話や対面を中心とした既存窓口では若年層へのアプローチが十分ではなく、10〜30代の相談件数は全体の約2割に留まっていた。また、共働き世帯の増加により、平日日中に窓口を利用できないケースも増えていたという。
今回の実証では、AIによる傾聴機能に加え、相談内容をもとに適切な支援窓口を案内する機能も実装された。白河市とZIAIは、実証を通じて得られる相談データを分析し、市民の潜在的な課題把握や支援体制の改善につなげる方針を示している。
※傾聴型AI:利用者の発言を否定せず受け止めながら対話を行うAI技術。カウンセリング的な会話設計を取り入れ、感情整理や心理的負担の軽減を支援する。
相談しやすさ向上の一方、AI依存も課題
今回の取り組みは、行政福祉における相談のハードルを下げる可能性がある。特に若年層では、電話や対面よりチャット形式を好む傾向が強く、AIを介することで「誰かに話したいが相談窓口には行きづらい」という層を支援につなげやすくなると考えられる。
また、24時間対応によって、深夜や休日しか時間を確保できない就労世帯にも利用機会が広がる。自治体側にとっても、潜在的な相談ニーズをデータとして把握しやすくなり、孤独・孤立対策や自殺予防施策の高度化につながる可能性がある。
一方で、AIによる対応だけでは十分でない場面もあると考えられる。複雑な精神状態や緊急性の高いケースでは、人間の専門職による判断や支援との連携が重要になる可能性がある。利用者が「AIに相談したから十分」と感じ、人への支援につながらなくなるリスクも指摘されそうだ。
さらに、相談内容には家庭環境や経済状況など機微な情報が含まれるため、個人情報保護を含めた慎重なデータ管理体制の整備が重要になりそうだ。今後、同様の取り組みが全国へ広がるかどうかは、AIの利便性と人による伴走支援をどこまで両立できるかにかかっていると言える。
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