キヤノンは、愛知・名古屋で行われたバスケットボール競技の空間を、東京の会場にリアルタイムで3D再現する実証結果を発表した。
IOWN APNとMR技術を組み合わせ、遠隔地から自由な視点で試合を観戦できる仕組みを検証している。
愛知の試合を東京で3Dライブ観戦
2026年9月25日、キヤノンは、第20回アジア競技大会のバスケットボール競技を対象に、競技空間を遠隔地へリアルタイムに3D再現する実証実験の結果を発表した。
実証は9月18日に実施され、愛知国際アリーナで撮影した競技映像にボリュメトリックビデオ技術(※1)を活用した。
撮影映像は、NTTなどが提唱する次世代通信基盤「IOWN APN」(※2)を通じ、試合中にキヤノン川崎事業所へリアルタイムで伝送された。
これにより、従来は撮影拠点に置く必要があった3D空間データ生成サーバーを遠隔地に配置し、機材配置や設備・運用面の効率化も検証している。
川崎で生成した3D空間データは、さらに東京・虎ノ門の会場へリアルタイムに送信された。
約60人の参加者がMRデバイスを装着し、テーブル上に立体的に再現された選手の動きやプレーを自由な視点から視聴した。
複数人が同じ3D空間を囲み、それぞれ異なる角度から観戦できる点も特徴である。
キヤノンによると、競技空間を遠隔地でリアルタイムに3D再現し、MRデバイスで自由視点のライブ観戦を提供した取り組みは世界初だという。
今後は国内外のパートナーとの協業や施設管理事業者との対話を深め、社会実装と新たなスポーツ観戦体験の創出を目指す方針だ。
※1 ボリュメトリックビデオ技術:多数のカメラで対象を複数方向から同時撮影し、人物や空間を立体的な3Dデータとして生成する技術。視聴者が任意の角度から映像を見られる。
※2 IOWN APN:光技術を中心に高速・大容量・低遅延の通信を実現するIOWN構想のネットワーク基盤。
遠隔観戦の拡張へ、導入負担も焦点に
今回の仕組みが実用化されれば、スタジアムやアリーナに足を運べない人でも、従来の映像配信とは異なる立体的な観戦体験を得られる可能性がある。
視聴者が自ら視点を選べるため、選手の動きやフォーメーションを多角的に確認しやすくなり、スポーツ観戦の楽しみ方を広げる手段になり得る。
また、遠隔地の施設をサテライト会場として活用できれば、試合会場以外にも観戦需要を生み出せる。
地域施設の集客や稼働率向上に加え、複数人で同じ空間を共有する体験は、個人向け配信とは異なる新たなスポーツビジネスにつながる余地がある。
一方、多数のカメラや3D生成環境、MR機器、高速通信基盤などを組み合わせるため、本格導入では機材・通信・運用面の負担も検討事項となるだろう。
競技や会場ごとに必要な設備構成も変わる可能性があり、継続的な運用コストや設置効率の検証が欠かせない。
今後は、技術的に実現できるかだけでなく、実際にどのような競技や施設で需要を得られるかの見極めも重要になるだろう。
遠隔地でも臨場感や自由視点を共有できる特徴を、継続的に利用される観戦サービスへ発展させられるかが普及の焦点となりそうだ。
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