2026年9月2日、国内のNECは、米Anthropicが推進するソフトウェア安全性向上の取り組み「Project Glasswing」に参画すると発表した。フロンティアAI「Claude Mythos Preview」を防御的サイバーセキュリティ業務に活用し、脆弱性の早期発見や対策の効率化を目指す。
NEC、自社の脆弱性管理にフロンティアAIを適用
NECは、Anthropicの「Claude Mythos Preview(以下、Mythos)」を、自社のソフトウェア開発やシステム運用、脆弱性管理プロセスに適用する。Mythosが持つ高度なソフトウェア分析能力を活用し、AIによる脆弱性検出方法の評価などを進める方針だ。
今回の取り組みでは、自社を「ゼロ番目のクライアント」と位置付ける「クライアントゼロ」の考え方を採用する。実際の社内業務でMythosを使いながら、その効果や安全性、運用ルールを検証し、得られた知見を顧客向けサービスの設計や導入方法、ガバナンス、人材育成に反映させる。
背景には、NECとAnthropicの協業拡大がある。NECは2026年4月、日本企業として初めてAnthropicとグローバルパートナーシップを締結し、業種別の業務特化型AIソリューションの共同開発や「BluStellar Scenario」へのClaude導入を進めてきた。6月には両社と金融業界8社による共創プロジェクトも発足している。
こうした関係を基盤に、今回はAI活用の領域をサイバーセキュリティへ広げる。NECが重要インフラのシステム構築やセキュリティで培った専門知識とMythosを組み合わせることで、AIネイティブ時代(※)に対応した新たな防御体制の構築を狙う。
※AIネイティブ時代:AIを既存業務の補助にとどめず、開発や運用、意思決定などの中核に組み込むことが前提となる環境を指す。
AI防御の高度化へ 専門家との組み合わせが鍵
今回の協業は、AIを単なる分析ツールとして使うのではなく、脆弱性管理そのものの高度化につなげる点に特徴がある。Mythosによるソフトウェア分析とNECのセキュリティ専門家による検証を組み合わせれば、脆弱性の発見から評価、対策までのプロセスを効率化できる可能性がある。
さらに、NECが保有する独自の脅威インテリジェンス(※)を組み合わせることで、AIの分析結果を専門的なセキュリティ知見で補完する構想も示されている。AI単独に依存せず、人間の専門性や既存のインテリジェンスを組み込むことは、企業システムへのAI導入を進めるうえで重要な視点と言える。
一方、高度なAIをセキュリティ業務へ組み込むほど、誤検知や判断結果の検証、運用ルールなどを含むガバナンスの重要性も増す。NECはまず自社で効果と安全性を検証し、その知見を顧客向けサービスへ展開することで、導入時のリスクを抑えながら実用性を高めていく考えだ。
今後は、こうした実践を通じてフロンティアAIを活用した脆弱性管理の方法論が蓄積されれば、NECのサイバーセキュリティサービスにも波及する可能性がある。
「.JPを守る」を掲げるNECにとって、AIを防御側の戦力として本格活用できるかが次の焦点になる。
※脅威インテリジェンス:サイバー攻撃者や攻撃手法、脆弱性などに関する情報を収集・分析し、攻撃への備えや防御に役立てるための知見。