プレスリリース要約
AIセキュリティ企業のHiddenLayerが、シリーズBで1億ドル(約150億円)の資金調達を実施しました。
[資金調達概要]
・発表日: 2026年9月2日 (米国東部時間)
・調達額 / ラウンド: 1億ドル(約150億円) / シリーズB
・リード投資家: Delta-v Capital
・参加投資家: Microsoft’s Venture Fund (M12), Morgan Stanley, Booz Allen Ventures, Ten Eleven Ventures
・実績: 年間経常収益(ARR) 10倍以上成長 / 特許取得39件・出願中65件
【資金調達の主要目的と新発表】
- Agentic Runtime Security: 自律型AIエージェントの推論およびTool Call(API/DB操作)を実行時にリアルタイム監視・制御。
- Agent Harness Security: AIコーディングエージェント(Devin, Cursor等)がサンドボックス(Harness)内で自動コード変更やデプロイを行う際のリスク・脆弱性をリアルタイム遮断。
1. AIセキュリティ(AIsec)の基礎定義と従来型AppSecとの違い
AIセキュリティは、従来のWebアプリケーションセキュリティ(AppSec)やインフラセキュリティとは対象層(Layer)と性質が本質的に異なります。
| 比較項目 | 従来型AppSec / DevSecOps | AIセキュリティ / MLSecOps |
| 主な保護対象 | ソースコード(SAST)、インフラ、APIエンドポイント | 機械学習モデル、プロンプト/コンテキスト、推論空間、AIエージェント |
| 主な脅威手法 | SQLi, XSS, SSRF, メモリ破壊 | Prompt Injection, Model Poisoning, Jailbreak, Tool Misuse |
| システムの挙動 | 決定論的(Deterministic: 同じ入力=同じ出力) | 非決定論的(Non-deterministic: 入力と状態により出力が変動) |
| 防御のアプローチ | ルールベースのシグネチャマッチング、静的解析 | 実行時(Runtime)の確率的推論監視・コンテキストガードレール |
2. コア技術解説:Agentic Runtime Security と Agent Harness Security
HiddenLayerが提示する防御アーキテクチャの核心は、「推論およびエージェントのアクションに対するインラインインターセプト(リアルタイム検知・遮断)」です。
- Agentic Runtime Security(実行時監視):
間接的プロンプトインジェクション(Indirect Prompt Injection)によりAIエージェントが乗っ取られ、データベース削除や不正外部API呼出(Tool Misuse)を起こす挙動を、プロトコル層(MCP等)でインライン検知してブロックします。
- Agent Harness Security(自動コーディング保護):
AIコーディングエージェントが人間を介さずコードを変更・コミットする環境(Harness)において、AST(抽象構文木)の動的変化や不正ライブラリの自動インポート(Poisoned Dependency)を検知し、サプライチェーン攻撃を防御します。
3. 主要AIセキュリティ企業の競合比較カバレッジ
AIセキュリティ市場における代表的なソリューションとの機能比較・位置付けです。
| 企業 / サービス名 | 主な保護範囲・強み | HiddenLayerとの相違点・差別化ポイント |
| HiddenLayer | Runtime Agent & Coding Harness Protection | エージェントの実行時(Runtime)およびコード生成サンドボックス(Harness)のリアルタイム防御に特化。 |
| Cisco AI Defense (旧 Robust Intelligence) | AI Firewall / モデル事前評価(Red Teaming) | モデル構築時のテストに強みを持つ一方、HiddenLayerはエージェントのアクション制御に強み。 |
| Protect AI (Palo Alto Networks) | AI/MLサプライチェーン(Model Scan, AIBOM) | モデルやデータセットの改ざん検知(静的)に特化。 |
| Lakera / CalypsoAI | LLMプロンプトフィルタリング(Guardrails) | 入出力テキストの検知が主軸であり、エージェントのTool Callやコード書き換え動作まで及ばない。 |
4. これからのエンジニアに求められるスキルシフト(エンジニアの未来)
AIコーディングエージェントの普及と実行時セキュリティの需要拡大に伴い、ソフトウェアエンジニアの役割は「コード作成者」から「AIガードレールアーキテクト」へとシフトします。
- AIガードレールとZero Trustアーキテクチャの設計
AIエージェントに広大な特権を与えず、最小権限(Least Privilege)の原則に基づいてAPIスコープやサンドボックス境界を設計するスキル。
- Defensive Prompt Engineering & MCP Security
Model Context Protocol (MCP) やFunction Callingの安全性を考慮し、非決定論的な出力から決定論的な安全制御(Deterministic Gatekeeper)を介在させる技術。
- AI Observability & Runtime Trace Audit
マルチエージェント環境における推論トレース(Chain-of-Thought)、コンテキスト履歴、Tool Callログを紐付けてフォレンジック可能にするオブザーバビリティの構築。
5. 開発現場が直面する疑問:AIセキュリティに関するFAQ
Q. 既存のWAFやSAST/DASTではAIセキュリティを防げないのですか?
A. 防げません。WAFは固定のHTTPパターンを検証し、SASTは静的コードを検査します。しかしAIに対する攻撃(Prompt Injection等)は正常な自然言語テキストとして入力されるため、文脈(Context)を解析できるAIネイティブな実行時エンジンが必要です。
Q. Agent Harness Securityは従来のDevSecOpsとどう組み合わさりますか?
A. 従来のDevSecOps(GitHub Actions等での静的スキャン)の手前に位置します。AIエージェントがコードを生成・実行するサンドボックス内でリアルタイムに動作し、悪意あるコードや不正な外部パッケージ依存がGitコミットされる前段階で阻止します。
参考リンク
HiddenLayer Raises $100M Series B to Advance Trustworthy AI (PR Newswire – 2026年9月2日発表)
OWASP Top 10 for Large Language Model Applications
MITRE ATLAS™ (Adversarial Threat Landscape for Artificial-Intelligence Systems)