Datachainは、オンチェーン取引の情報を第三者から秘匿しながら、監査や規制対応に必要な相手には開示できる仕組みの検証環境を整えた。
決済・ウォレット事業者による、法人向けプライバシー保護機能の導入検討を支援する。
送金情報を選択的に秘匿、監査向け開示にも対応
2026年7月29日、ブロックチェーン企業のDatachainは、「KuraPrivacy」のService APIのテスト版提供を開始し、Kura Payについてもパートナー企業向けに提供を始めた。
決済事業者やウォレット事業者が、自社サービスへのプライバシー保護機能の組み込み方をテストネット上で検証できる。
一般的なブロックチェーンでは、送金元や送金先、金額、資産残高などの取引情報を第三者が確認できる。
こうした透明性は取引の検証に役立つ一方、取引先や資金の流れを秘匿したい法人や機関投資家にとって、利用をためらう要因となっていた。
Service APIでは、受取先だけを隠す送金のほか、送信者・受信者・金額をすべて秘匿する取引に対応する。
さらに、監査人や経理部門へ閲覧用の鍵を渡すことで、資産を移動する権限を付与せず、指定した口座の取引履歴や残高だけを確認させる選択的開示が可能だ。
許可リストや拒否リストによる移転制御、事前に定めた方針に基づく強制移転にも対応する。
認証にはEOA(※)のほか、WebAuthnやパスキー、マルチシグなどに対応したコントラクトウォレットを利用できる。
既存サービスの認証方式に合わせて、導入方法を検証できる設計だ。
併せて提供するKura Payでは、秘匿口座への入出金、送信者・受信者・金額を隠した送金、閲覧鍵による取引情報の参照など、KuraPrivacyの主要機能をブラウザ上で体験できる。
※ EOA:秘密鍵によって管理される一般的なブロックチェーン上のアカウント。利用者が秘密鍵で取引に署名し、暗号資産の送金やスマートコントラクトの操作を実行する。
秘匿性と監査可能性の両立が法人決済普及の鍵
KuraPrivacyの利点は、ブロックチェーン上で取引の有効性を検証できる性質を維持しつつ、企業間の商流や残高などの機密情報を隠せる点にある。
必要な相手にだけ情報を開示できれば、競合に取引実態を推測される不安が和らぎ、ステーブルコインを使った法人決済の導入を後押しする可能性がある。
一方、Service APIはテストネット向けであり、商用環境での処理性能や障害復旧、鍵管理、監査体制は今後の検証課題となるだろう。
秘匿性の向上で不正取引の把握が難しくなる恐れもあるため、許可リストや強制移転の実効性に加え、閲覧鍵と署名鍵を分けた厳格な権限管理も欠かせないと考えられる。
今後、開発者向けSDKの提供や共同PoCが進めば、既存のウォレットや決済サービスへ組み込む負担は軽減されそうだ。
Datachainが金融機関や決済事業者との検証を重ね、法令対応や利用者保護、障害時の責任分担を具体化できれば、KuraPrivacyが実証段階を越え、法人向けの商用決済基盤として普及する余地が広がるだろう。
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