ブロックチェーン基盤を開発するDatachainは、法人向けWeb3ウォレット「Datachain Wallet」の先行評価版を提供開始した。
内部統制や鍵管理、取引情報の保護に対応し、2026年内の正式版公開を目指す。
法人向けウォレットの先行評価版を提供
2026年7月9日、株式会社Datachainは、ステーブルコインやデジタルアセットを法人が保有・送金・管理するための「Datachain Wallet」を開発し、一部機能を限定した先行評価版の提供を始めたと発表した。
対象は金融機関、決済事業者、Web3企業から一般の事業会社まで、ステーブルコインやデジタルアセットの活用を検討する幅広い法人を想定している。
Datachain Walletは、送金時の申請・承認ワークフローや権限管理に加え、複数人の承認を必須とするマルチシグ(※)に対応し、内部統制に強みがある。
誰が申請し、承認したのかを管理できるため、担当者単独による資産移動を防ぎ、法人業務に必要な内部統制や監査対応を支援する。
鍵管理にはPasskeyを採用した。シードフレーズの紛失や漏えい、担当者の退職に伴う引き継ぎといった運用リスクを抑え、生体認証などを使って利用できる。
また、ガス代を利用企業が個別に準備する必要がないガスレス機能により、暗号資産の調達や補充、経費管理の負担を軽減する。
さらに、Datachainが開発する「KuraPrivacy」と連携し、取引金額や残高、送金先などの不要な公開を抑えながら、監査や規制対応で必要となる情報を選択的に開示できる設計とした。
APIやSDKによるサービスへの組み込み、SaaSとしての利用、国内制度に応じたカスタマイズにも対応する方針だ。
Datachainは利用企業からのフィードバックを正式版へ反映し、2026年内の提供開始を目指すとしている。
※マルチシグ:暗号資産などの取引を実行する際、複数の秘密鍵による署名を必要とする仕組み。特定の担当者だけでは送金できないため、不正操作や鍵の紛失によるリスクを抑えられる。
法人のオンチェーン活用を阻む運用課題を軽減
Datachain Walletの利点は、従来のWeb3ウォレットが抱えていた法人利用上の課題を、一つの業務基盤でまとめて解消しようとしている点だと言える。
承認手続きや権限管理、監査証跡を整備できれば、企業は既存の財務管理に近い統制を維持しながら、ステーブルコイン決済や法人間送金を導入しやすくなる。
ガスレス機能も実務上の効果が大きい。送金のたびに暗号資産を調達する必要がなくなれば、価格変動を伴う資産の保有や細かな経費処理を避けられる。
Web3に詳しい専任担当者がいない企業でも、デジタルアセットを扱うハードルが下がる可能性がある。
一方、先行評価版では提供機能や利用条件が限定されており、多様な会計システムや社内規程にどこまで適応できるかは今後の検証課題となり得る。
プライバシー保護についても、秘匿性を高めるだけでなく、規制当局や監査担当者へ必要な情報を適切に提示できる運用設計が欠かせない。
総じて、法人決済やトレジャリー管理まで利用範囲が広がれば、Web3ウォレットは単なる暗号資産の保管手段から、企業の資金管理を支える金融インフラへ発展する可能性がある。
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