日本円ステーブルコイン「JPYC」を展開するJPYC株式会社は、シリーズBラウンドで累計約50億円の追加資金調達を完了したと発表した。調達資金は、マルチチェーン対応やAI時代を見据えた決済基盤、人材採用などへ投じられる。
JPYC、発行拡大とマルチチェーン戦略を加速
日本円ステーブルコイン「JPYC」は2025年10月の発行開始以降、市場で急速に流通規模を拡大している。
2026年5月22日に発表されたシリーズB調達では、累計約50億円が追加資金調達され、金融およびweb3の両領域におけるエコシステム拡大に活用する方針が示された。
また、調達資金はAIエージェント同士が自律的に価値交換を行うM2M決済(※1)領域にも投入される。さらに、法人向け送金基盤や将来的なデジタル給与払いへの対応、人材採用、法務・AML/CFT(※2)体制の強化も進める計画だ。
同社によると、2026年5月時点で口座開設数は1万8000件、累計発行額は25億円を突破した。
また、総取引高は350億円超に達しており、発行残高を大きく上回る資金回転率を記録している。実際に、日次での資産回転率は取引流動性の100%を超える水準を記録しているという。
現在JPYCは、Ethereum、Polygon、Avalancheなど複数チェーンに対応しており、直近ではKaiaチェーンも追加された。
DeFi(分散型金融)やNFT、ゲーム、実店舗決済など、異なるデジタル経済圏を横断できる共通通貨としての役割を強めている。
加えて、LINE NEXTのWeb3ウォレット「Unifi」での採用も発表されており、大規模ユーザー基盤との連携を通じて、日本円ステーブルコインの日常利用拡大を狙う。
※1 M2M決済:Machine to Machine決済の略。AIやIoT機器同士が、人を介さず自律的に送金や決済を行う仕組み。
※2 AML/CFT:マネーロンダリング防止およびテロ資金供与対策。金融サービスでは厳格な本人確認や不正取引監視が求められる。
普及拡大に期待も、規制と競争激化が課題か
今回の大型調達によって、JPYCは国内ステーブルコイン市場で先行優位をさらに強める可能性がある。特に、日本円建てで即時送金や低コスト決済を実現できる点は、既存金融インフラに対する大きな差別化要因になると考えられる。
AIやWeb3領域との親和性も高いだろう。
将来的にAIエージェントが自律的に契約や決済を実行することが一般的になれば、24時間稼働できるデジタル通貨の需要が拡大する可能性がある。JPYCがその基盤通貨として定着すれば、日本国内発のデジタル金融インフラとして存在感を高める展開も期待できる。
一方で、課題も少なくないはずだ。
マルチチェーン展開が進むほど、チェーン間接続に伴うセキュリティリスクは複雑化し得る。また、日本国内ではステーブルコイン規制が整備されつつあるため、今後は監督強化や運営コスト増加も想定される。
さらに、大手銀行や金融グループによる独自ステーブルコイン参入が本格化した場合、競争環境は急速に変化する可能性が高い。
現時点では先行しているJPYCだが、今後は技術力だけでなく、法規制対応や実店舗での導入実績、企業連携の広がりが競争力を左右する局面に入りそうだ。
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