日本銀行の氷見野良三副総裁が日本金融学会で講演し、ステーブルコイン(※)が社会に広く浸透した場合、「預金との単一性」をどのように維持するべきかが重要な論点になると指摘した。
日銀、ステーブルコインの「単一性」課題を提起
氷見野副総裁は2026年5月16日に開催された講演の中で、ステーブルコインが一般的な決済手段として普及した際、銀行預金との「単一性」をどこまで満たせばいいのかが問題になると述べた。
現在の銀行間送金では、日本銀行が決済の仲介役となることで、異なる銀行間でも「通貨の単一性」が保たれている。
一方、ステーブルコインは民間主体が発行し、日銀の決済機能を直接介さないこともあるため、裏付け資産の管理状況や発行体の信用力によっては、法定通貨との価格連動が崩れる場面が起こりうる。
国際決済銀行(BIS)も、こうした構造について単一性の欠如を強く警告している。
氷見野副総裁は、SNSのように一度普及したサービスが継続利用される構造に触れ、「特定の民間企業が基幹的な経済インフラを独占的に支配することが果たして望ましいことかどうか。少なくとも当該企業には中央銀行類似のガバナンスが課せられるべきなのではないか」との見解を示している。
※ステーブルコイン:米ドルや日本円などの法定通貨と価格連動するよう設計されたデジタル資産。価格変動の大きい暗号資産と異なり、決済や送金用途での活用が期待されている。
決済革新の期待と「民間通貨化」のリスク
ステーブルコインが普及すれば、利便性は大きく向上するだろう。
24時間リアルタイム送金や低コスト決済を実現できることに加え、国境を越えた資金移動を効率化できれば、特にWeb3やデジタル金融分野にとって恩恵は大きいと考えられる。
日本国内でも法整備が進み、銀行やフィンテック企業による発行検討が相次いでいるため、今後は企業間決済や個人送金、デジタル証券取引など、利用領域はさらに拡大する可能性もある。
一方で、利用者が銀行預金と同水準の安全性を期待するようになれば、発行体には極めて高度な流動性管理や監督体制が求められるはずだ。金融不安時には、大規模な換金要求によって市場が混乱するリスクも否定できない。
さらに、巨大IT企業やグローバルプラットフォームが決済インフラを独占した場合、金融システムの主導権が国家から民間企業へ一部移行する可能性もある。
今後は、決済利便性だけでなく、「誰が通貨の信頼を支えるのか」という制度設計そのものが重要なテーマになりそうだ。
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