2026年5月15日、松本尚デジタル相は、AIを利用した高度なサイバー攻撃への対応を協議する関係省庁会議を18日に開催すると発表した。米Anthropicの最新AI「Claude Mythos」が持つ高い脆弱性発見能力が警戒されており、日本政府は金融機関やITインフラへの影響を見据えた対策具体化を急ぐ構えである。
政府、AI時代のサイバー防衛を本格協議
松本デジタル相は15日の閣議後会見で、AI性能の急速な高度化を踏まえ、政府全体としてサイバーセキュリティー対策を強化する必要があるとの認識を示した。18日に開催予定の関係省庁会議では、各省庁横断での対策パッケージについて議論が行われる見通しだ。
背景にあるのが、米Anthropicの最新AI「Claude Mythos」の存在である。同モデルはシステム上の脆弱性を高精度で発見できるとされ、サイバー攻撃への転用リスクが問題視されている。特に金融分野では、銀行間送金や決済ネットワークが攻撃対象となった場合、企業活動や物流にまで影響が波及する可能性がある。
すでに金融庁は14日、金融機関やIT企業を集めた初会合を開催した。政府内では「AIによる攻撃能力の進化が、防御側の対策速度を上回り始めている」との危機感も強まっている状況だ。
松本氏は会見で、「Mythos」のアクセス権を政府が現時点で保有していないことにも触れ、「既存技術で対策するしかない」と説明した。一方で、今後さらに高性能なAIが登場することを前提に、継続的な対応体制が必要になるとの考えを示している。
※脆弱性:コンピューターやネットワークに存在する設計上・運用上の弱点。悪用されると不正アクセスや情報漏えい、システム停止などにつながる。
AI防衛競争、日本企業にも対応圧力
今回の動きは、単なるサイバー対策強化にとどまらず、AIそのものが国家安全保障や経済インフラ防衛の中心技術へ変化しつつあることを示している。
「Mythos」は現在、米グーグルなど一部企業向けに限定公開されているが、日本政府と3メガバンクも早ければ5月中に利用可能になる見通しである。攻撃リスクへの警戒が高まる一方、防御側でもAI活用を進めなければ対抗できないという現実が浮き彫りになっている。
特に国内企業では、従来型のセキュリティー運用だけでは対応が難しくなる可能性が高い。AIは膨大なログ解析や異常検知を高速化できる反面、攻撃側も同じ技術を利用できるため、防御と攻撃の「AI軍拡競争」が始まりつつあると言える。
さらに、政府機関や金融業界が先行してAI防衛体制を構築した場合、その基準が民間企業全体へ波及する可能性もある。今後は大企業だけでなく、中堅企業や地方インフラ事業者にもAI対応型セキュリティー投資が求められる局面に入ることになりそうだ。
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