2026年5月13日、中国テンセントは2026年1〜3月期決算を発表した。増収増益を維持する一方、AI投資が約2000億円規模で利益を押し下げたことを開示。中国テック企業間のAI競争が、財務面にも影響を及ぼし始めている。
AI投資が利益2000億円押し下げ
テンセントは2026年1〜3月期において、売上高1964億元、純利益580億元といずれも前年同期比で増加し、全体としては堅調な業績を維持した。主力のゲームや広告事業が安定した収益を支えている。
一方で、今回の決算で特に注目されたのがAI投資の影響である。非国際会計基準(Non-IFRS)(※)ベースの営業利益は756億元にとどまったが、AI関連事業の売上や費用を除外した場合は844億元となる。この差分である約88億元、すなわち約2000億円がAI投資による利益押し下げ要因と算出される。
同社は大規模モデル「混元」やAIアシスタント「元宝」、開発支援ツール「CodeBuddy」など複数のAI事業を同時に展開しており、投資フェーズにあることが明確になった。中国ではアリババ、バイトダンス、バイドゥなども巨額投資を進めており、今回の開示はAI競争が短期収益を犠牲にする段階に入ったことを示す。
また、消費者向けAI領域では競争の厳しさも浮き彫りとなった。調査会社のデータによると、月間アクティブユーザー数で「元宝」は4位にとどまり、バイトダンスやアリババの主要アプリに大きく差をつけられている。ユーザー獲得競争でも後れを取っている状況である。
※Non-IFRS:国際会計基準に基づかない独自の業績指標。特定の費用や一時的要因を除外し、企業の実質的な収益力を示すために用いられる。
企業向けAIで回収狙うも不確実性
企業向けAI領域へのシフトは、テンセントにとって収益化戦略の中心の一つとみられる。大規模モデル「Hy3 preview」は実用性を重視した設計で、社内では131製品に導入されている。こうした動きは、業務効率化やサービス高度化を通じて、将来的な収益基盤の強化につながる可能性がある。
企業向けAIは一般に高単価かつ継続課金型のモデルを構築しやすいとされ、クラウドやSaaSと組み合わせることで安定的な収益化が進むとの見方もある。一方で、大規模な初期投資が先行するため、投資回収の期間が長期化するリスクも指摘されている。
また、消費者向けAI領域での出遅れについては、ユーザー接点やデータ蓄積の面で競争上の課題となる可能性がある。主要プレイヤーがユーザー基盤を拡大する中で、エコシステム形成の主導権争いが一段と激しくなるとの見方もある。
今後は、企業向け分野での収益化の進展や投資効率の改善が注目される局面にある。AI投資が利益成長に結びつくのか、それともコスト負担として継続するのかについては不確実性が残っており、経営戦略の実行力が問われる状況にある。
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