2026年5月12日、自民党プロジェクトチームは、ディープフェイクを悪用した「なりすまし広告」詐欺の拡大を受け、政府に法整備を求める提言案を取りまとめた。SNS広告の本人確認義務化などを通じ、被害抑止へ政策の軸足が移る見通しである。
SNS偽広告に法規制 本人確認義務化へ
自民党の「ディープフェイク対策合同プロジェクトチーム」は、著名人の顔や名前を無断使用したSNS上の投資詐欺広告の急増を受け、法整備を求める提言案をまとめた。プラットフォーム事業者に対し、広告主の本人確認を義務付けるとともに、行政機関から通報があった場合の迅速な削除対応を制度化するよう求めている。
これまで政府は広告審査の強化などを事業者に要請するにとどまっていたが、被害拡大を背景に法的拘束力を伴う措置へと踏み込む方針に転じた。警察庁によれば、SNS型投資詐欺の被害は2025年に約9538件、被害額は約1274億円に達し、いずれも前年比で大幅に増加している。
また、法整備には一定の時間を要することから、政府と事業者が連携した専用通報サイトの設置や、実効性のある運用ガイドラインの策定も提案された。さらに、デジタル庁や総務省、警察庁など複数省庁にまたがる対策を一元的に把握する「総合調整機能」の創設も盛り込まれており、断片化していた対応体制の再編が進む見通しだ。
提言は2025年12月に設置された同PTが取りまとめたもので、近く政府に正式提出される。座長の平将明氏は「対応を取らないプラットフォーマーは許されない」と述べ、強い姿勢での対策推進を示した。
※ディープフェイク:生成AIなどを用いて人物の顔や音声を高度に合成し、実在するかのように見せる技術。詐欺や偽情報拡散への悪用が問題視されている。
規制で抑止も 表現と負担の均衡が焦点
今回の提言は、プラットフォーム責任を明確化し、詐欺被害の構造そのものに踏み込む点で一定の意義を持つと考えられる。広告主の本人確認義務化は匿名性を悪用した犯罪の抑止につながる可能性があり、削除対応の迅速化と組み合わせることで初動段階での被害封じ込めにも寄与するとみられる。専用通報サイトの整備も、被害検知から対応までの時間短縮に資する可能性がある。
一方で、規制強化は副作用を伴う可能性がある。広告審査の厳格化は正規事業者の参入障壁となるおそれがあり、特に中小事業者にとっては負担増につながりかねない。また、プラットフォーム側の運用コスト増加は広告価格の上昇や審査遅延を招く可能性も指摘される。さらに、表現の自由や匿名性とのバランスをどこに置くかは制度設計上の重要な論点となる。
加えて、ディープフェイク技術は急速に高度化しており、規制のみで対応し続けることには限界が生じる可能性がある。今後はAIによる検知技術の高度化や国際的なルール整備といった多層的な対策が求められる局面に入るとみられる。制度と技術の両輪で進められるかどうかが、実効性を左右する重要な要素となる。
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