2026年5月8日、ソニーグループの社長 CEO 十時裕樹氏は経営方針説明会にて、AIを最重要テーマとしつつも「人のクリエイティビティが常に中心にあるべき」と強調した。日本企業による生成AI活用の方向性として、効率化ではなく創作支援に軸足を置く姿勢が明確になっている。
AIは代替ではなく創造性拡張へ
十時氏はAIをソニーグループ全体の成長戦略の中核と位置付けつつも、「アーティストやクリエイターに取って代わるものではない」と明言した。AIはあくまで人の創造性を引き出すための補助的な存在であり、制作の主体は人間であるべきという思想が示された形である。
同社はAIを新たな価値創出とエンタテインメント領域の成長機会をもたらす技術と捉えている。一方で単なるコスト削減や自動化を目的とするのではなく、クリエイターの感性や発想力を拡張するツールとして活用する方針を明確にした。
具体的な取り組みとして、バンダイナムコホールディングスとの協業により生成AIを含む先端技術の実証を進めている。映像制作における作業速度の向上や1人当たりの生産性改善が確認されており、制作工程の高度化が進みつつあると言える。
またソニー・インタラクティブエンタテインメントの開発現場では、AIをソフトウェア開発や品質保証、3Dモデリング、アニメーション制作などに導入している。反復的な作業を自動化することで、クリエイターがより本質的な表現や体験設計に集中できる環境の構築が進行中である。
創作支援AIの進展と人材価値の再定義
ソニーの方針は、AI時代におけるクリエイターの役割を再定義する動きと捉えられる。
制作工程の一部が自動化されることで単純作業の比重は減少し、構想力や世界観設計といった上流工程の価値が相対的に高まる可能性がある。
これは制作スピードと品質を両立できる点で大きなメリットとなる。
特にゲームや映像といった大型IPでは、開発期間の短縮や試行回数の増加が競争力に直結するため、AIの導入はビジネス上の優位性をもたらすと考えられるだろう。
一方で、AI活用の進展は新たな課題も内包する。クリエイターのスキル要件が変化し、従来型の制作工程に依存した人材は適応を迫られる可能性は否めない。またAI生成物の権利処理や品質管理といった問題も依然として解決途上にある。
今後は、AIと人間の役割分担をいかに設計するかが企業競争力を左右する要素となるだろう。ソニーのように「人中心」の思想を明確に打ち出す企業が、創作とテクノロジーのバランスをどう実装していくかが注目される。
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