2026年10月5日、三井情報株式会社とNTTドコモビジネス株式会社が、全国広域分散GPUを活用した大規模ゲノム解析の共同実証に成功したと発表した。日本国内における研究機関や医療分野のデータ利活用高度化をめざす取り組みである。
全国5拠点の分散GPU活用により、大規模ゲノム解析の処理時間を大幅短縮
三井情報とNTTドコモビジネスは、全国広域分散GPU実証環境「GPU over APN Testbed(※1)」を活用し、バイオ分野のゲノム解析における分散ワークロードに関する共同実証を行った。 本実証では、三井情報が研究開発を進めるストレージアクセスなどのワークロード最適化技術と、ゲノム解析データの高速検索技術を組み合わせて検証を実施した。その結果、従来の1拠点での処理と比較して、解析時間を25から29%程度に短縮させることに成功している。
近年はゲノム医療推進法の施行を背景にデータの利活用が進む一方、研究現場ではペタバイト級データの増加に対して人的・計算資源が不足している。 さらに、高性能な計算資源の高騰や供給制約も顕在化しており、処理に数日を要する場合がある点が課題となっていた。こうした中、NTTドコモビジネスが提供するIOWN APNを活用した地理的に離れた拠点のGPUを一体的に利用する技術が適用された。
本実証では、札幌から福岡まで全国5拠点に分散配置されたGPU環境上でユースケースが実行されている。首都圏のストレージに約170億レコード、約5TBのゲノム解析データを格納し、がんの発生に関わるドライバー変異(※2)などの特定や集計を行い、実用性が検証された。 各ユースケースの検証において、5拠点分散処理が1拠点での処理時間を大幅に上回るスピードを発揮することが実証されている。
※1:GPU over APN Testbedとは、IOWN APNを介して全国各地に配置されたGPUリソースを接続し、離れた拠点のGPUを一体的に利用できる実証環境のこと。
※2:ドライバー変異とは、がんの発生、増殖、悪性化に直接関与することが知られている遺伝子変異のこと。
データ集約型研究におけるメリットと今後の展望、広域分散化の課題
今回の成果は、計算資源の高騰やデータ量の増大に悩む研究現場にとって大きなメリットをもたらす可能性がある。 地理的に離れたGPUを一体利用できることで、単一データセンターの電力・収容制約を回避しながら大規模な解析が可能になり、研究生産性の飛躍的な向上が期待されている。 三井情報は独自の高速検索技術に関する知見を活かして効率的なデータ活用の研究開発を継続する予定であり、NTTドコモビジネスも「GPUaaS(※3)」などへの応用を通じたAI基盤の提供をめざしている。
一方で、広域分散環境における安定稼働やネットワーク遅延の影響、システム複雑化に伴う運用負荷などは今後の懸念材料やデメリットになりうる。 パートナー企業とのエコシステム全体でこうした課題を克服し、多様な産業への波及効果を生み出せるかどうかが、今後の商用化に向けた重要な鍵を握ると考えられる。
※3:GPUaaSとは、高性能なGPUとAI開発に必要なソフトウェアを組み合わせたGPUクラウドサービスのこと。
関連記事: