2026年9月30日、国内のNECなど5社が提案した「APNを活用した地域分散型データセンターによる地産地消型データ流通基盤の実証」が、総務省の令和8年度「ワット・ビット連携関連実証」に採択された。栃木県内でGPU資源を共有し、地域内でのAI処理を検証する。
APNで地域のGPUを接続しAI処理を分散
今回の実証では、NECを代表機関として、ケーブルテレビ、鹿沼ケーブルテレビ、宇都宮ケーブルテレビ、エイジェックスポーツマネジメントの5社が連携する。
背景には、AI利用の進展によってデータセンター需要が急速に高まる一方、事業者ごとに高性能GPUを配備することが経済性や電力面で負担になるという課題がある。
そこで5社は、栃木県内の複数拠点に分散配置したGPUサーバをAPN(※)で接続し、事業者間でGPUリソースを共有する分散推論モデルを検証する。大都市圏のデータセンターに処理を集中させるのではなく、地域内で計算資源を融通する仕組みを構築することで、リアルタイム性や災害時の継続性を高める狙いだ。
実証期間は2026年8月から2027年2月まで。3社の地域事業者拠点を光ファイバで接続し、NECの「SpectralWave WXシリーズ」を用いて地域分散型データセンター環境を構築する。
さらに、地域野球チーム「栃木ゴールデンブレーブス」の試合映像を対象に、NECの映像認識AIとLLM技術によるリアルタイム推論を実施する。試合状況を解析し、テロップなどの情報を付与することで、分散環境における映像AIの活用も検証する。
※APN:All-Photonics Networkの略。ネットワークの通信区間を光技術で構成し、低遅延・大容量・低消費電力などを目指す通信基盤。
地域分散型DCが広げるAI活用 自律運用には課題も
今回の取り組みが実用化されれば、地域事業者が個別にGPUを保有するのではなく、複数拠点の計算資源を共有する形でAI処理を提供できるようになる。限られたGPUを地域全体で効率的に利用できれば、設備投資や電力負担を抑えながらAIサービスを展開する選択肢になるだろう。
また、地域内で処理を完結させる構成は、映像解析だけでなく、自治体の公共サービス、地域医療、防災などへの応用も想定されている。大都市圏の設備への依存を抑えられるため、低遅延性や継続性を生かした地域向けサービスの創出につながる可能性もある。
一方で、異なる事業者が保有するネットワークや設備を安定して連携させることには技術的な課題が残る。特に、品質や光ファイバの敷設ルートを事前に把握しにくい環境で迅速な相互接続を実現するには、自動化が重要になる。
そこで実証では、光波長パス自動最適化技術や、災害時に通信経路を動的に切り替える機能も検証する。GPUの共有だけでなくネットワーク運用まで自律化できるかが、地域分散型データセンターを他地域へ展開するうえでの焦点になるだろう。