株式会社ベストが暗号資産詐欺の被害者向け資金追跡サービス「CryptoTracer」の提供を開始した。1件9,800円(税込)で、最短で翌日に報告書が提供される。
暗号資産の送金経路を自動追跡、最短翌日に報告
2026年8月16日に発表されたCryptoTracerは、被害者が持つトランザクションハッシュ(TXID※)と送金先アドレスを入力し、公開されているブロックチェーン情報から資金の移動経路を追跡するサービスである。
最終的な到達先を特定し、PDF形式の報告書として提供する。面談や来店は不要で、フォーム入力から依頼を完了できる。
同社によると、従来の送金先調査は着手金20万円〜数百万円が相場であるという。
しかしCryptoTracerでは、独自開発した追跡システムによって調査を自動化し、1トランザクションあたり9,800円(税込)に設定されている。
着手金はなく、調査費用が事前に確定するため、調査の長期化による追加費用も発生しないとしている。
報告書は、調査結果の概要、送金経路のルート図、実際のトランザクションハッシュを記載した経路一覧、結論の4部構成になる。
記載されたハッシュはブロックエクスプローラーで再検証でき、警察への被害相談時の参考資料として利用できる形式であるという。
対応するのはBitcoin、Ethereum、BNB Smart Chain、Polygon、TRONの5チェーンで、USDTやUSDCなどの主要ステーブルコインも追跡対象にされている。
DEXでのスワップや異なるチェーンをまたぐブリッジを経由した送金にも対応する。
なお、特定できなかった場合は、追跡できた範囲を記載した報告書が提供されたうえで返金されるという。
本件の背景には暗号資産詐欺の被害拡大がある。
2025年の暗号資産送信型被害は認知件数2,148件、被害額246.3億円となり、前年比でそれぞれ173.3%、188.0%増加している。
※トランザクションハッシュ(TXID):ブロックチェーン上の取引を識別する固有の文字列。ブロックエクスプローラーで取引履歴を確認する際などに利用される。
低価格化の効果と限界、今後の定着が焦点か
CryptoTracer最大のメリットは、これまで高額だった資金追跡へのアクセスを大幅に引き下げられる点だろう。1件9,800円という価格設定により、被害直後に数十万円規模の費用を用意できない人でも調査を始めやすくなるはずだ。
最短翌日に報告されることも、資金移動が進む前に証拠を整理できるという点で有効そうだ。
一方、「資金追跡」と「返金」は別の問題であるということには留意する必要があるだろう。ブロックチェーン上で送金先を特定できても、そこから資金を取り戻せるとは限らない。
また、同社自身も説明しているように、民間の調査会社が独自に取引所口座を凍結したり、資金回収を保証したりすることはできない。
これらの点を誤認すれば、追跡サービスを利用した後の二次被害につながる可能性もある。
今後は、低価格な追跡サービスを暗号資産詐欺の初動対応における選択肢として定着させられるかが焦点になりそうだ。
調査結果を警察などの捜査機関への相談につなげる導線が機能すれば、被害者が高額な調査費用を理由に泣き寝入りする状況を減らす一助となるかもしれない。
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