東京大学大学院工学系研究科の松尾・岩澤研究室は、高校生向けAIカリキュラムの先行実施校の全国公募を開始した。
全4章・2単位約60コマで構成し、「情報Ⅰ」や「総合的な探究の時間」への組み込みも想定する。
高校向けAI教育を全国で先行実施
松尾研は2026年8月25日、開発中の教材を2026年度中に章単位で先行実施する「トライアル校」と、2027年度以降の通年導入を検討する「パイロット校」の募集を開始した。
対象は全国の高等学校、中等教育学校、中高一貫校、教育委員会で、一次締切は9月30日となる。カリキュラムや教材、実施支援は原則無償で提供される。
カリキュラムは導入に加え、データサイエンス、大規模言語モデル、コンピュータビジョン、AIエンジニアリングの全4章で構成する。
合計約60コマの体系的な内容を持ちながら、各モジュールを単独で抜き出し、「情報Ⅰ」「情報Ⅱ」「総合的な探究の時間」などへ組み込める設計だ。
対象は数学Ⅰ・Aと情報Ⅰを履修した高校1年生相当を想定し、数式を抑えた図解とサンプルコード中心の演習を採用する。
さらに、カリキュラムガイドや単元計画、指導案、評価基準、演習プログラムを含む授業パッケージを提供し、専門外の教員でも運営しやすい構成としている。
また、OSやICT環境に依存せず、ブラウザ上でPython演習ができる「PyHiroba」β版も公開した。
2026年秋以降は東京都立高校を含む複数校でトライアルを予定し、2027年4月には教材全体の展開を目指す。
AI教育の標準化へ、実践蓄積が鍵
今回の取り組みは、高校でAIを単なる利用技術として扱うのではなく、仕組みや限界を理解したうえで課題発見から検証、評価までを経験させる点に意義がある。
既存科目へ部分導入できるモジュール型であれば、学校ごとの授業時数や教育課程に合わせやすく、AI教育を始める際の導入障壁を下げる可能性がある。
一方、全国規模で普及させるには、教材の完成度に加えて、学校ごとに異なるICT環境や生徒の習熟度へ対応できる柔軟性も求められる。
特にAI分野は技術変化が速いため、教材内容を継続的に更新しながら、一定の教育品質を維持できる仕組みが重要になるだろう。
トライアル校やパイロット校で多様な実践事例が蓄積されれば、授業時間や学習段階に応じた導入方法を比較しやすくなる。
そこで得られた知見を教材や教員養成へ反映できれば、特定の学校だけに依存しない再現性の高いAI教育モデルへ発展する可能性がある。
2028年度以降の全国展開を見据えるなか、既存教科とどう接続し、技術の進歩にも対応できる継続的な授業モデルを確立できるかが普及の鍵になりそうだ。
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