2026年8月21日、京王電鉄バスと京王バスは日野自動車のAI搭載「車内事故防止システム」を調布市周辺の路線バスに導入すると発表した。車内事故のリスク低減と乗務員の負担軽減を目指し、8月下旬から運用を開始する。
AI解析で転倒リスクを検知 調布の路線バスで運用開始へ
京王電鉄バスおよび京王バスは、日野自動車が開発したAI搭載型「車内事故防止システム」を同社が運行する路線バスに導入することを決定した。
路線バスにおける発車や減速時の揺れは、つり革や手すりにつかまっていない乗客の転倒・負傷事故を引き起こす要因となっている。国土交通省の「事業用自動車総合安全プラン2030」でも車内事故件数の削減が掲げられており、バス業界全体の大きな課題として位置づけられてきた。
今回導入されるシステムは、車内カメラの映像をAIで解析し、乗客の姿勢や動きから転倒の危険性を把握する仕組みである。危険を検知した際には画面と音声で乗務員へ通知するとともに、運転席後ろなどの車内モニターを通じて乗客側へも着席やつり革・手すりの利用を促す。
運用は2026年8月下旬から調布営業所が所管する路線(鷹66・調34・調11・調12・調41など)の特定車両で開始される予定だ。さらに同社は、日本バス協会および日野自動車と連携し、2026年9月7日から10月2日までシステムの果たす効果を検証する実証実験にも参加する。
※事業用自動車総合安全プラン2030:国土交通省が策定した、バスやトラックなどの事業用自動車による事故削減を目指す総合的な安全対策目標。
ドライバー負担軽減と事故抑止 自動運転時代を見据えた展開
本システムの導入は、車内事故の抑止にとどまらず、バス運行における業務環境の改善や将来的な自動運転化を見据えた重要な施策と言える。
大きなメリットとして期待されるのが、乗務員の安全確認作業がAIによって支援される点である。発車時などの目視確認に伴う負担が軽減され、運転操作そのものに集中しやすくなると考えられる。人材不足が課題となるバス業界において、安全性の確保と働きやすい環境整備を同時に推進する意義は大きい。
一方で、懸念点や課題も存在する。どれほど高度な技術であっても、すべての危険行為や不慮の事故を完璧に検知・防止できるわけではない。運行側のテクノロジー導入だけに頼るのではなく、完全に停車するまで立ち上がらないといった乗客側の安全意識と協力が伴って初めて、真の事故削減効果が生まれると考えられる。
また、本取り組みは将来の自動運転バス実現(※)に向けた重要な布石となる可能性が高い。無人運行や省人化が進む次世代のモビリティ社会においては、車内の安全状況をリアルタイムに把握する自動監視システムが不可欠となる。今回の調布エリアでの実績と検証データは、今後の公共交通の進化を支える基盤となるだろう。
※自動運転バスの実現:ドライバーの負荷軽減や将来の無人運行を目指し、車両の制御や車内の安全管理をAIなどの先進技術で補完・自動化する取り組み。
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