2026年8月21日、日本の富士フイルムはグループ会社の大分工場内で先端半導体材料の新棟が完成し、稼働を開始したと発表した。生成AIなどの普及に伴う需要拡大に応え、洗浄材の製造能力を従来の3倍に拡大する。
富士フイルム大分新棟が稼働 ポストCMPクリーナー製造能力3倍
富士フイルムは、半導体材料事業の中核会社である富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズの大分工場内に建設していた新棟を2026年8月より稼働させた。投資額は約70億円に上り、延床面積約3,600平方メートルの鉄骨造4階建ての建屋に自動生産設備や品質評価機器を完備している。本施設はポストCMPクリーナー(※)の製造、品質検査、オフィスとして使用される。
今回増産するポストCMPクリーナーは、研磨工程で研磨剤(CMPスラリー)を使った処理の後に、金属表面を保護しながら粒子や有機残留物を洗浄する材料である。AI半導体をはじめとする先端デバイスでは回路の微細化と積層化が進んでおり、製造の歩留まりを左右する本洗浄材の重要性が急増している。
同社の半導体材料事業は、2021年度から2025年度にかけて売上高が年平均約20%の成長を記録し、グループ全体を牽引する中核分野となっている。2021年度から2024年度にかけて1,000億円以上の成長投資を実施し、主力となるCMPスラリーや感光性絶縁膜材料「ZEMATES」などの生産能力を日米欧アジアで増強してきた。大分工場の増産体制が整ったことで、旺盛なグローバル需要に対応する供給網がさらに強固となった。
※ポストCMPクリーナー:半導体表面を研磨剤で均一に平坦化した後、金属表面を守りつつ残留した粒子や微量金属、有機物を除去する洗浄液。
AI需要を捉えるグローバル展開 単一事業依存の抑制や競合が課題
大分新棟の稼働により、富士フイルムはポストCMPクリーナーの売上高を2030年度に対2024年度比で2倍以上に成長させると見込んでいる。
主力製品であるCMPスラリーと合わせたセット提案を行える点は同社ならではの大きな強みと言え、欧米やアジアの先端半導体メーカーからのシェア獲得をさらに加速させると期待される。
また、前工程から後工程まで多角的に製品群を網羅するワンストップソリューション体制は、顧客の課題解決において高い競合優位性を発揮するだろう。
環境面においても、屋根への太陽光パネル設置による再生可能エネルギー活用が進み、持続可能なサプライチェーン構築という観点で顧客評価の向上に寄与すると考えられる。
一方で、リスクや課題が存在しないわけではない。半導体市場は世界経済やIT投資の動向によるサイクル変動が大きく、設備投資が先行した局面で市況が冷え込めば、過剰な固定費負担が収益を圧迫する可能性がある。
加えて、最先端材料分野では海外大手メーカーとの技術開発競争が熾烈を極めており、常に高い純度と品質を維持し続ける継続的な投資負担が重くのしかかるリスクも否定できない。
それでも、前工程・後工程にわたる豊富なラインアップとグローバルな安定供給体制を軸に、同社がAI時代における高度情報化社会の基盤を支える重要プレイヤーとしての地位を確立していく可能性は極めて高いと考えられる。
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