Googleのジェフ・ディーン氏が、サンジェイ・ゲマワット氏ら3人と新会社「Discovery Loop」の設立を発表した。米国発の同社は、AIを活用して機械学習や科学、工学の実験プロセスを自動化し、研究開発の加速を目指す。
ジェフ・ディーン氏ら「Discovery Loop」を設立
GoogleでAI研究を率いてきたジェフ・ディーン氏は2026年8月6日、サンジェイ・ゲマワット氏、オリオール・ヴィニャルス氏、クオック・ル氏とともに、新会社「Discovery Loop」を設立すると発表した。
同社は、機械学習や科学、工学の自動化を通じて、発見と進歩を加速させることを使命とするPublic Benefit Corporation(※)として設立された。
4人は14〜30年にわたって協力してきた長年の友人・共同研究者であり、これまで世界で広く利用される製品やインフラ、AIモデルの構築に携わってきたという。
新会社では、これまでの経験を生かし「実験ループ」の自動化を基本方針に掲げている。
最初の対象となるのは、機械学習研究とエンジニアリングであるが、将来的には機械学習以外の科学・工学分野への応用も視野に入れているという。
ディーン氏らは、米国工学アカデミー(NAE)の14のグランドチャレンジに含まれる課題のほぼすべてについても、重要な部分でこの手法を適用できる可能性があると説明している。
資金調達ではRadical VenturesとKhosla Venturesを初期ラウンドの主導投資家として選定。Lightspeed Venture Partners、Kleiner Perkins、Doerr Capital、Alphabet(Google)も参加し、今後数週間でシードラウンドを完了する予定だ。
今後はオフィス確保や創業チームの採用を進め、自社を最初の顧客としてシステム開発を開始するとしている。
※Public Benefit Corporation:公益的な目的を企業の使命に組み込んだ米国の法人形態。利益だけでなく、社会的・公益的な価値の実現も重視する。
研究開発を高速化する一方、AIによる実験設計が課題に
「Discovery Loop」設立最大の意義は、研究開発における「試行回数」を大幅に増やせる可能性があることだろう。AIが実験の実行や結果の分析、次の試行に向けたフィードバックまで担えれば、従来よりも短時間で多くの実験を繰り返せるようになるかもしれない。
研究者は単純な実験作業から解放され、より高度な仮説構築や判断に集中しやすくなりそうだ。
また、同社自身を最初の顧客とする方針は、実用性を高めるうえで有効と考えられる。
自社の研究開発でシステムを利用し、そこで得たフィードバックを迅速に改良へ反映できれば、研究自動化の精度を高める好循環につながる可能性がある。
一方で、実験を自動化すること自体が研究成果を保証するわけではない。
AIが実験条件や評価基準を適切に設定できなければ、大量の試行を行っても有効な発見につながらない可能性もある。自動化の範囲が広がるほど、AIが何を試し、どの結果を採用するかという判断の重要性も増すだろう。
今後の焦点は、ML研究で培った実験自動化の仕組みを、科学や工学の異なる領域へどこまで展開できるかにありそうだ。
もし研究分野をまたいで機能する基盤を確立できれば、AIは研究者を補助する存在から、実験と検証のサイクルそのものを高速化する存在へと進化するかもしれない。
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