日本音楽著作権協会(JASRAC)は、SNS「X」に楽曲を用いた動画を投稿する場合、個別申請が必要になると公式に発表した。
他SNSとの契約形態の違いが利用者の対応を分ける構造が明らかとなった。
Xは包括契約外、投稿ごとに許諾が必要
2026年4月14日の発信の核心は、JASRACとプラットフォーム間の契約形態の違いにある。
YouTubeやInstagram、TikTokといった主要SNSでは、運営企業がJASRACと包括許諾契約(※)を締結しており、利用者は個別の申請や使用料支払いを行う必要がない仕組みとなっている。
一方で、Xは現時点でJASRACとの包括契約を結んでいない。
このため、同サービス上で「歌ってみた」や演奏動画など、管理楽曲を含むコンテンツを投稿する場合には、投稿者自身が事前に許可を取得し、使用料を支払う必要があるとのことだ。
JASRACは、X上で「歌ってみた」「弾いてみた」動画の投稿を巡る話題が出ていたことを受け、公式アカウントを通じて改めてルールを告知した。
投稿は短時間で大きな反響を呼び、利用者の間で制度理解の遅れが顕在化した形だ。
実際、SNS上では既存動画の削除を検討する声や、制度の複雑さに戸惑う反応が相次いでいる。
この反響からは、同じ楽曲を使う動画でも、投稿先のプラットフォームによって必要な手続きが異なることが、利用者に十分共有されていなかった様子がうかがえる。
※包括許諾契約:プラットフォーム事業者が著作権管理団体と一括で契約し、ユーザーが個別に許諾を得ずに楽曲を利用できる仕組み。使用料は運営企業がまとめて支払う。
創作文化に影響 利便性と権利保護の緊張
今回のルール明確化は、クリエイター経済における構造的な課題を浮き彫りにしている。
包括契約がある環境では、利用者は低い障壁で創作活動に参加できるが、個別申請が必要な場合、手続きコストが参入障壁として機能する可能性がある。
特に「歌ってみた」やファンによる二次創作は、SNS上での拡散を通じて文化的価値を生み出してきた領域である。
その流通基盤が制約を受ける場合、投稿先のプラットフォーム選択が変化し、結果としてコンテンツの分布が偏ることも想定できる。
一方で、著作権管理の観点では、個別申請は権利者への対価還元をより直接的に担保する仕組みであり、適切な収益配分を維持するうえで合理性も持つ。
無許諾利用が常態化すれば、権利者側のインセンティブが損なわれるリスクも無視できない。
今後の焦点は、Xが包括契約を締結するか、あるいは別の権利処理スキームを構築するかに移ると考えられる。
ユーザー利便性と権利保護のバランスをいかに設計するかは、SNS時代のコンテンツ流通における重要な制度設計課題となるだろう。
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