米ブルームバーグは、Apple が半導体不足への対応として、Samsung ElectronicsやIntel Corporationを新たなチップ供給先候補として検討していると報じた。
AI需要の急拡大で半導体供給が逼迫する中、TSMC依存からの脱却を模索する動きである。
Apple、TSMC依存見直しへ動く
ブルームバーグが米国時間5月5日に報じたところによると、Appleは半導体不足への対応策として、SamsungやIntelを新たなチップ供給先候補として検討しているという。
現在、Appleは自社デバイス向けのSoC(※)を独自に設計しており、その製造は主要サプライヤーである台湾のTSMCが担っている。
しかし近年は、生成AIやデータセンター向け半導体需要が急増しており、先端半導体の供給能力が世界規模で逼迫している状況だ。
Appleは現時点で大規模発注には踏み切っていないものの、SamsungやIntelと継続的に協議を進めているとされる。
さらに、Apple幹部が米テキサス州で建設中のSamsung工場を視察したとも報じられている。
背景には、先端半導体の供給不足リスクに加え、製造拠点や調達先を米国側へ移すよう求める政治的圧力もあるとみられる。
トランプ政権は以前から、米国内製造や米企業からの部品調達をテクノロジー企業へ強く求めてきた。
Appleも近年は製造・調達リスクの分散を進めており、「Mac」の一部製造工程を米国内へ移管したほか、2025年の対中関税強化時には、生産拠点をインドやベトナムへ分散させてきた。
※SoC:System on a Chipの略。CPUやGPU、メモリ制御など複数の機能を一つの半導体に統合したチップ。スマートフォンやPCなどの性能を左右する中核部品として使われている。
半導体調達の分散は新常態となるか
今回の供給先分散の動きは、Appleの半導体供給網の柔軟性向上につながる可能性がある。
AI需要拡大による供給逼迫や地政学リスクが続く中、調達先を複数化できれば、製品供給の安定性向上につながると考えられる。
特に米国内生産を重視する流れとも合致し、長期的には調達戦略そのものの再構築が進む展開もありそうだ。
一方で、TSMC依存からの脱却は容易ではないとみられる。
Apple製チップは長年TSMCの先端製造技術を前提に最適化されてきた経緯があり、SamsungやIntelへの切り替えでは性能や歩留まり面で課題が生じる可能性もある。
供給先分散が進んだとしても、短期的にはコスト増加や開発負荷拡大を招く懸念は残りそうだ。
今後、Appleが実際に供給網の再編へ踏み切れば、半導体業界全体の競争環境にも影響を与えるかもしれない。
これまで“TSMC一強”とされてきた先端半導体市場に競争原理が戻れば、SamsungやIntelの存在感が一段と高まる展開も考えられる。
Appleのような巨大テック企業が“供給安定性”を重視し始めれば、先端半導体市場では性能だけでなく、安定供給能力そのものが競争軸として重視されていくだろう。
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