三菱電機は信越化学工業、エコアドバンスと連携し、廃棄された家庭用空調製品からレアアース磁石を回収し、新製品へ再利用する国内初の自己循環リサイクルを開始した。
空調製品から希少資源を再利用
三菱電機は2026年6月2日、廃棄された家庭用空調製品からレアアース磁石(※)を回収し、再資源化したうえで、新しい家庭用空調製品に再利用する仕組みを国内で初めて開始したと発表した。
連携するのは、信越化学工業とエコアドバンスであり、三菱電機グループの回収・解体機能も組み合わせた自己循環リサイクルである。
背景には、レアアースなど希少資源をめぐる供給制約と環境負荷の問題がある。
レアアースは高性能モーターなどに欠かせない一方、採掘量に限りがあり、採掘時の環境負荷も大きい。
使用済み製品から資源を回収し、再利用する仕組みの構築は、製造業にとって重要な課題になっている。
今回のスキームでは、ハイパーサイクルシステムズが家電リサイクル法に基づき家庭用空調製品を回収・解体する。
続いて、グリーンサイクルシステムズが圧縮機を分解し、ローター部品を取り出す。
エコアドバンスはローター部品からレアアース磁石を回収し、信越化学がレアアースを分離・精製して再資源化する流れだ。
その後、再資源化されたレアアースを使った磁石を、三菱電機が家庭用空調製品に再利用する。
同社が一連の流れを管理することで、回収から再利用までの循環を円滑化し、効率的な資源活用につなげる。
本スキームで再利用するレアアース磁石は、同社が国内で家庭用空調製品を製造する際に使うレアアースの約35%を見込む。
さらに三菱電機は今後、レアアース磁石を使用する業務用空調製品やその他の自社製品についても、それぞれの回収ルートに応じた資源循環スキームの構築を目指すとしている。
※レアアース磁石:ネオジムなどの希土類元素を使った高性能磁石。小型でも強い磁力を持ち、空調機器やモーターなどに使われる。
資源循環は製造業の競争軸へ
今回の取り組みは、単なるリサイクル施策にとどまらず、製造業の調達リスクを下げる手段としても意味を持つと言える。
レアアースは高性能製品に不可欠な一方で、資源の偏在や採掘負荷といった課題を抱える。使用済み製品から一定量を回収できれば、原材料調達の一部を国内循環で補える可能性がある。
特に注目すべきは、家庭用空調製品という身近で大量に流通する製品を対象にしている点だ。
空調機器は省エネ性能の向上に伴い、高性能モーターの重要性が増している。
そこに使われるレアアース磁石を回収し、再び製品へ戻す仕組みが広がれば、サーキュラーエコノミーの実装例として波及効果は大きいとみられる。
一方で、課題も考えられる。今回の仕組みが継続的に機能するには、回収量の安定化、分解工程の効率化、再資源化コストの抑制が欠かせない。
環境価値だけでなく、事業として持続できる採算性も問われることになるだろう。
また、三菱電機が対象製品の拡大を視野に入れていることは、資源循環を一部製品の環境施策にとどめず、事業全体の調達・生産モデルへ組み込もうとする姿勢を示している。
業務用空調製品やその他の自社製品にも展開できれば、レアアースの再利用量は増え、希少資源の有効活用と環境負荷低減を両立するモデルはより強固になるだろう。
製品を「売って終わり」にしない循環型の設計思想は、今後の製造業における競争力の一部になっていきそうだ。
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