2026年5月13日、米Meta Platformsは通信アプリ「WhatsApp」において、AIとの会話内容を保存・学習に利用しない新機能を導入すると発表した。プライバシー懸念の高まりを受け、安心してAIを使える環境整備を進める。
AI会話を非保存化 新機能の全容
今回導入される「インコグニートチャット」は、AIアシスタントとの会話内容を記録せず、学習データにも利用しない設計が特徴である。ユーザーの発言は処理後に消去され、同社を含む第三者が内容にアクセスできない状態が保証されるという。ブログ上でも「会話は保存されず、誰にも見られることなく思考やアイデアを探求できる」と説明している。
この機能の背景には、AI利用の拡大に伴うデータプライバシーへの懸念がある。現状では、ユーザーが財務や健康、業務関連といった機密性の高い情報をAIに共有するケースが増えており、その扱いに対する不信感が課題となっていた。
メタのAIは一部の対話データをモデル改善に活用する可能性がある一方、ワッツアップの個人チャット自体はエンドツーエンド暗号化(※)により保護されており、今回の機能はAI領域に特化した追加的な保護策と位置づけられる。
現時点での対応はテキスト入力に限定され、画像などのアップロードには対応していない。また、安全対策として、不適切な質問には回答を拒否したり、会話を別の方向へ誘導したりする仕組みも組み込まれている。
今後数ヶ月以内に順次展開される。
※エンドツーエンド暗号化:送信者と受信者のみが内容を閲覧できる暗号化方式。通信途中やサービス提供者であっても内容を解読できない仕組みを指す。
信頼性向上の一手か 利便性とのトレードオフ
今回の取り組みは、AI普及における重要な課題の一つである「信頼性」を高める施策として位置づけられる。ユーザーが機密情報を扱いやすい環境が整えば、AIは日常業務や意思決定の領域でより深く活用される可能性がある。特にビジネス領域では、これまで入力をためらっていた情報の活用が進むことで、利用範囲の拡大につながるとみられる。
一方で、データを蓄積しない設計はAIの進化に影響を与える可能性も指摘される。従来のモデルは対話データを通じて精度を高めてきたため、非記録化が進めば、パーソナライズや応答品質の向上に一定の制約が生じる可能性がある。また、安全性への信頼が高まることで、ユーザーが機密情報を過度に入力するリスクにも留意が必要だ。
今後は、プライバシー保護と性能向上のバランスが重要な競争要素の一つになると考えられる。規制強化やユーザー意識の変化を踏まえると、非記録型のAI設計が広がる可能性は高い。今回の動きは、AIと個人データの関係性に変化をもたらす契機になるとみられる。
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