2026年5月8日、LINEヤフーは2025年度通期決算とともに、2026年度の事業方針を発表した。AIエージェントを軸にサービス構造を再編し、広告やEC、サブスクを含む収益モデルをAI時代向けへ転換する方針を打ち出した。
LINEヤフー、AI軸へ事業構造を転換
LINEヤフーの2025年度通期売上収益は前年度比6.2%増の2兆363億円、調整後EBITDA(※)は同5.5%増の4966億円となった。アスクルのシステム障害による影響を受けながらも増収増益を維持しており、障害影響を除くベースでは売上収益13.3%増、調整後EBITDA12.6%増と高い成長率を示した。
メディア事業では、生成AI普及の影響でディスプレイ広告や検索広告が弱含む一方、LINE公式アカウントを活用したアカウント広告が成長を支えた。LINE公式アカウント数は49.3万件に拡大し、LINEミニアプリ(※)は3.3万件まで増加。LINE内で予約や購入、会員管理まで完結する流れが強まっている。
同社は4月からAIエージェント「Agent i」を本格展開しており、検索や買い物、問い合わせなど幅広い領域でAI対応を進める方針だ。企業向けには「Agent i Biz」や「LINE OA AIモード」を展開し、接客だけでなく、分析や事業運営支援にもAI活用を広げていく。
さらに、Yahoo!ショッピングでは出店無料モデルから課金型へ転換するほか、AI経由での商品購入に対する送客手数料の導入も予定している。消費者向けでは、637万件まで拡大したLYPプレミアム会員基盤を活用し、新たなAI課金プランを展開する計画だ。
※調整後EBITDA:企業の本業による収益力を示す指標。利払い・税金・減価償却費などを除いて算出される。
※LINEミニアプリ:LINEアプリ内で予約や注文、会員証機能などを提供できる小規模アプリ機能。
AI仲介型経済へ 利便性向上と支配力拡大の懸念
今回の発表で注目されるのは、LINEヤフーが単なるAI機能追加にとどまらず、AIを軸とした新たな経済圏形成を意識した動きを強めている点である。利用者自身が行っていた検索や比較、商品選定をAIが代行する場面が増えれば、インターネット上の行動構造にも変化が生じる可能性がある。
利用者側にとっては、検索や予約、問い合わせなどをLINE内で完結できる利便性向上が期待される。企業側でも、AIによる接客や分析支援の普及によって、人手不足対策や業務効率化につながることが期待される。
一方で、AIによる情報推薦の比重が高まれば、プラットフォーム側への依存度が強まる可能性もある。どの商品やサービスを優先表示するかによって流通や広告価値が左右されるため、アルゴリズム設計の透明性は今後の重要な論点になりそうだ。
また、AI経由手数料やAI課金モデルが普及した場合、従来の「広告を見るインターネット」から、「AIが仲介するインターネット」へ変化していく可能性もある。LINEヤフーの今回の方針は、日本国内におけるAIエージェント活用競争の方向性を示す動きとして注目される。
関連記事: