米ホワイトハウスは、科学研究へのAI活用を掲げる「科学の黄金時代に向けた京都ビジョン」に、米国を含む17カ国が賛同したと発表した。科学研究の加速や人材育成を国際的に進める方針を示している。
超知能と自律実験で、未踏の研究領域を開く
2026年10月4日の発表によると、京都ビジョンは第23回STSフォーラムの年次総会にあわせた閣僚級の共同宣言として示された。
賛同したのはアルゼンチン、ドイツ、日本、韓国、英国、米国など計17カ国。科学技術政策局(OSTP)局長のマイケル・クラツィオス氏が主導し、科学のエコシステムを強化して、発見と繁栄の新たな時代を目指すとしている。
ビジョンでは、スーパーインテリジェンス(SI※)を科学に活用することで、科学的発見を大幅に加速させる新たな手法を開拓できるとの認識が示された。大規模な自律実験によって実験や分析の能力を広げ、これまでにない研究領域を開くことを見据えている。
具体策として、長期助成や迅速な助成、賞金・課題型の制度など多様な研究資金の活用を促すほか、新たな研究機関モデルの試行を奨励した。
また、科学研究向けのAIツールや科学データ、計算基盤、実験設備への研究者のアクセス拡大にも取り組む方針だ。
人材面では、優秀な学生や若手研究者への投資と、研究に打ち込める支援・自由・機会の提供を表明した。多くの技術分野の進展は、機器を操作・保守・改良できる人材に左右されるとの認識も示し、実践的な訓練の拡充に加え、部門横断型の博士課程やフェローシップ、研究連携も奨励している。
なお、クラツィオス氏は2026年7月、米国の研究開発の方向性を再考する報告書「Science: A New Golden Age」をトランプ大統領に提出済みだ。同報告書は、米国の科学技術研究体制を約80年ぶりに包括的に見直す内容と位置づけられている。
※スーパーインテリジェンス:科学研究における既存作業を加速するだけでなく、新たな研究や実験を可能にすると位置付けられているAI。
AI研究が広がる一方で研究体制の変化も焦点に
AIを研究に組み込む動きが広がれば、研究者はデータ分析や実験の一部をAIに任せ、より複雑な課題に時間を割けるようになるだろう。自律的な実験と分析が機能すれば、研究サイクルの設計そのものが変わる展開も考えられる。
ただし、AIの性能を高めるだけでは十分でない。研究現場で扱える人材や計算資源、実験設備、データを整えられなければ、効果は引き出しにくい。
研究者にはAIと実験機器の双方への理解が求められ、従来とは異なる教育や人材育成が必要になる場面も増えそうだ。
こうした基盤の整備では、資金の配分をどう考えるかも論点になる。AIで研究が速く回るようになれば、成果や課題に応じて機動的に資金を動かせる仕組みが役立つ可能性がある。
長期の支援と組み合わせることで、土台を支えつつ研究テーマの多様化も後押しできるかもしれない。
今後は、AIを研究現場に導入すること自体よりも、研究者、資金、データ、計算基盤、実験設備をどう結び付けるかが重要になりそうだ。
17カ国の賛同を契機に、各国が研究制度や人材育成まで含めてどこまで具体化できるかが、科学研究へのAI活用を左右する要素になり得る。
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