2026年9月25日、国内IT大手のTISI株式会社はレガシーシステムの移行・保守を支援する「保守AIプラットフォーム構築サービス」の提供を開始した。独自基盤により業務の効率化と属人化の解消を目指す。
モダナイゼーションの成果を活用し独自AI基盤で保守作業を効率化
企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進やクラウド活用の拡大に伴い、基幹システムやレガシーシステムのモダナイゼーション(※)需要が急速に高まりを見せている。特に変換ツール等を活用してプログラムを書き換える「リライト手法」によるマイグレーションは、移行にかかるコストや工期、リスクを軽減できるアプローチとして市場での注目度が極めて高い。
しかし、システムの移行完了後における運用保守の効率化やナレッジの継続的な継承については、これまで十分な対策が講じられてこなかった側面がある。レガシー資産に習熟した専門人材の不足や高齢化が深刻化する中、従来のシステム運用で培われた知見を運用・保守フェーズで組織的に活用する体制の整備が急務となっていた。
こうした課題に対し、TISIは独自のモダナイゼーション技術と生成AIを融合させた新たな基盤を開発した。本サービスでは、システム移行の過程で生成された分析結果や設計情報などの成果物をナレッジベースとして登録する。利用者は独自開発されたAIエージェントとチャット形式で対話することで、複雑なシステム構造や設計内容、過去の障害履歴などを自然言語で迅速に検索・取得できる仕組みである。
影響調査や初期対応のスピードが格段に向上することにより、担当者個人の記憶や経験に頼っていた従来の保守体制からの脱却が可能となる。実案件資産を用いた検証では、保守業務全体の作業時間を最大で30%削減できる効果が確認された。
※モダナイゼーション:長年運用されてきた老朽化・複雑化したレガシーシステムを、最新のIT技術やクラウド環境に適した構成へと再構築・刷新すること。
AWS連携で安全性を確保 2032年度に1,000億円目指す
機密性の高いシステム資産を取り扱う保守領域において、セキュリティの確保は極めて重要な要素として位置づけられる。本プラットフォームでは基盤に「Amazon Bedrock AgentCore」を採用し、入力データやナレッジベース情報の厳格な管理を実現した。企業での利用を前提とした認証機能や監視機能を備えることで、高い安全性を保持した生成AI環境の提供を可能にしている。
この取り組みは、レガシーシステムの技術的負債(※)に悩む企業にとって大きなソリューションとなるだろう。ノウハウが特定の個人に依存するリスクを大幅に低減し、ナレッジの再現性を組織全体で高めるメリットは非常に大きいと言える。一過性の成果物にとどまりがちだった設計情報が運用期にも価値を生む点も画期的だ。
一方で、生成AIが回答する情報の精度維持や、実際の現場における運用プロセスの定着化といった課題にも配慮が必要となる。導入企業側におけるガイドライン整備や運用ツールの適正な評価が、成果を最大化する鍵を握ると推測される。
TISIは今後、本サービスを含む「Xenlon~神龍 モダナイゼーションサービス」全体で2032年度までに累計売上高1,000億円以上の達成を目指す方針だ。今後は保守領域にとどまらず、他業務へのAIエージェント展開やナレッジ活用の拡大を進める計画であり、モダナイゼーションと生成AIの融合による企業のDX支援の動向に大きな関心が寄せられている。
※技術的負債:短期的・目先の効率性を優先したシステム開発や運用の結果、将来的に保守運用コストの増大やシステムの柔軟性低下を招く潜在的なリスクや問題のこと。