2026年9月29日、国内の村田製作所は、実験データや技術ナレッジとマルチAIエージェント(※)を連携したAI駆動型研究開発基盤を開発した。実験計画からデータ解析、レポート作成、知見の蓄積まで一貫して支援し、研究開発の効率化を目指す。
マルチAIエージェントで研究開発工程を一気通貫
村田製作所が開発した基盤は、実験データベース、分析データベース、独自アルゴリズム、社内の技術ナレッジと複数のAIエージェントを連携させた環境である。材料組成や製造条件、分析結果、特性評価などの情報を組織やチームを越えて活用できる仕組みを整え、研究者が蓄積されたデータを効率的に扱えるようにした。
研究者はウェブブラウザーから自然言語で解析内容や目的を指示できる。AIエージェントは指示に応じて実験データの参照、解析計画の立案、解析用コードの生成・実行、可視化、考察案の作成、レポート生成などを自律的に進める。
データ解析や科学的考察、レポート作成などの役割を複数のAIエージェントに分担させることで、それぞれの専門性を生かしながら一連の業務を処理する構造だ。
材料開発を想定した社内実証では、相関分析やヒートマップによる可視化、考察案の作成、レポート生成、次の実験条件の提案までを一連で実行できることを確認した。一部事例ではデータ読み込みから解析、図表作成、レポート生成まで約10分で完了したほか、業務モデルに基づくシミュレーションでは、実験計画・データ解析・レポート作成の3工程で単位時間当たりの処理件数が従来比約22.5倍になると試算している。
※マルチAIエージェント:複数のAIエージェントが役割を分担し、連携して一連の業務を実行する仕組み。
AI活用で研究速度向上も最終判断は人が担う
今回の基盤によって、研究者が過去の実験結果を探し、データを整理・解析して次の実験方針を決めるまでの負担を軽減できる可能性がある。実験結果から知見を抽出し、それを次の条件検討へつなげる流れが短縮されれば、研究開発のサイクルを高速化する効果が期待できる。
特に村田製作所は、材料開発からプロセス開発、商品設計、生産技術、分析・評価までを手がけ、多様な実験データと技術ナレッジを蓄積している。これらを研究テーマや組織の壁を越えて活用できれば、個別の研究成果を組織全体の知見として再利用しやすくなるだろう。
一方、AIが生成した解析結果や考察をそのまま採用するのではなく、研究者が専門知識に基づいて内容を確認し、最終判断を行う点は重要だ。AIによる処理速度を高めながら科学的な妥当性を人が確認することで、効率と信頼性の両立を図る考えである。
さらに同社は、データサイエンス教育や活用環境の整備、社内啓発を専門チームが組織横断で進めている。AI基盤そのものの高度化に加え、研究者が自らデータを活用できる体制を整えることが、今後の研究開発変革を左右すると考えられる。