英Armは、AIエージェントと次世代モバイルグラフィックスに対応する「CSS for Mobile 2」を発表した。CPU、GPU、システムIPなどを統合し、AIを前提とした次世代スマートフォン向けの統合基盤を構築する。
ArmがAIエージェント向け新モバイル基盤を発表
2026年9月8日にArmが発表したCSS for Mobile 2は、AIエージェント(※1)時代のモバイル端末に必要な処理を想定した新たなコンピューティングプラットフォームである。
新GPU「Mali G2-Ultra NX」、新CPUクラスター「Arm C2 CPU cluster」、強化したシステムIP、物理実装、開発者向けソフトウェアを一つの基盤に統合した。
GPUのMali G2-Ultra NXは、Maliシリーズで初めて専用ニューラルアクセラレーターを搭載する。従来のグラフィックス処理とニューラル処理を同じパイプラインで扱える設計とし、Arm Neural Technologyとの組み合わせで、ニューラルグラフィックスの電力当たり性能を最大4倍に高めるとしている。
さらに、新たな実行エンジンと次世代Ray Tracing Unitも搭載し、従来型のゲームコンテンツでも前世代比で最大14%の性能向上を実現するという。
開発した技術は、Sumo Digitalの「Neural Dawn」などで活用され、Tencent GamesやUnity China、NetEaseなども関連技術をゲームや開発環境に取り入れている。
CPUでは、最高性能のC2-Ultraと効率重視のC2-Proを組み合わせ、2基のSME2(※2)ユニットを搭載する。最新のSmall Language Modelsでは最大70%の高速化が可能で、C1-Ultra比でC2-UltraはAI性能が最大1.7倍、シングルスレッド性能が15%向上しながら、同等性能時の消費電力を最大38%削減するという。
開発者向けにはKleidiAIや「Arm Neural Graphics Development Kit」を提供するほか、「AI Portal」から最適化済みモデルやコード、ツールへアクセスできる環境を整える。
ArmはCSS for Mobile 2を通じ、シリコンメーカーや開発者がAI機能を活用しやすい統合基盤を提供する考えだ。
※1 AIエージェント:推論だけでなく、文脈を維持しながらアプリやサービスを操作し、複数の処理を組み合わせてタスクを進めるAI。
※2 SME2:Arm CPU向けの演算拡張機能で、AIや機械学習などのベクトル・行列演算を効率化する。
AI統合で変わるスマホの性能競争と普及への課題
CSS for Mobile 2の最大のメリットは、CPUやGPUなど個別の部品だけでなく、プラットフォーム全体でAI処理を最適化しやすくなる点だろう。
AIエージェントが複数のアプリやサービスをまたいで処理するようになれば、推論性能だけでなく、文脈維持やタスク制御を含めた総合的な処理能力が向上しそうだ。
また、ニューラルグラフィックスの活用が広がれば、リアルタイムレンダリングや映像表現の高度化につながる可能性もある。
性能向上と消費電力削減を両立できれば、AIとゲームの双方で端末体験が引き上げられるかもしれない。
一方で、利用体験は基盤の性能だけでなく、全体のエコシステムの豊かさにも左右される。
端末メーカーによる実装やソフトウェア最適化、対応するAIモデルやゲームの拡充が必要であるため、実際の普及速度は開発者側の対応状況次第となりそうだ。
とは言え今後、AIエージェントがスマートフォンの標準的な操作基盤へ成長すれば、モバイル端末の競争軸は単純なCPU性能やカメラ性能から、AIを含むシステム全体の処理効率へ移ると考えられる。
CSS for Mobile 2は、その変化を支える統合基盤として存在感を高めていくかもしれない。
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