内閣府は「AI時代の知的財産権検討会」で、生成AI事業者向けの「プリンシプル・コード」案を示した。モデルや学習データ、知財保護策の開示を促し、AI技術の進歩と権利保護の両立を目指す。
生成AIの学習データや知財対策を開示
2026年8月18日に公表されたコード案の対象は、生成AIシステムを公衆に提供する開発者と、AIを組み込んだサービスを提供する事業者である。日本に拠点を持たない企業でも、日本向けにサービスを提供している場合は対象となる。
一方、社内利用など限られた範囲だけで使うシステムや、公衆提供を伴わない研究開発は原則として対象外だ。
中核となる原則1では、モデル名やバージョン、設計仕様、利用規定、トレーニング方法に加え、学習・検証データの種類、ウェブクロール、外部データセットの利用状況などの概要開示を求める。
知財保護策としては、責任体制の整備、robots.txtやペイウォールへの対応、学習ログの保存、海賊版サイトのクロール回避、侵害生成物を抑える技術、電子透かしやC2PAなども挙げられた。
また、法的手続きを進める権利者らが、指定したURLなどが学習データの取得源に含まれるかを照会できる原則2を設ける。原則3では、生成AIでコンテンツを作った利用者も、一定条件を満たせば、類似コンテンツの掲載元が学習データの取得源に含まれるかを確認できる仕組みを示した。
コード案に法的拘束力はなく、営業秘密や安全性に関わる情報の強制開示も求めない。各原則は「コンプライ・オア・エクスプレイン」(※)で運用し、受け入れ企業には実施状況を自社サイトで公表し、内閣府へ届け出たうえで原則毎年更新することを期待する。内閣府は届出企業と公開ページを一覧化する方針だ。
※コンプライ・オア・エクスプレイン:定められた原則を実施するか、実施しない場合はその理由を説明する方式。法令による一律義務ではなく、各事業者の事情を踏まえた自主的対応を促す仕組み。
透明性向上の一方、運用負担が課題に
この仕組みが定着すれば、利用企業や権利者は、AIサービスごとの学習データの扱いや知財保護体制を比較しやすくなる。法人が生成AIを調達する場面でも、コードへの対応状況がガバナンスや信頼性を判断する材料となり、透明性の高い事業者が選ばれやすくなる可能性がある。
一方、事業者側には、開示情報の整理や更新、権利者・利用者からの個別照会への対応といった継続的な運用負担が生じる。詳細な説明を求めるほど、営業秘密やセキュリティとの境界設定も難しくなるため、透明性と事業上の機密性をどう両立するかが課題になる。
さらに、任意規範である以上、実効性は事業者の受け入れや市場側の評価に左右される。今後、対応状況が法人調達やサービス選定で重視されれば、法的義務ではなくても事実上の業界標準へ近づく可能性がある。反対に参加が広がらなければ透明性向上の効果は限定的となるため、運用実績が今後の焦点となるだろう。
内閣官房 「AI時代の知的財産権検討会(第13回)議事次第」
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