2026年7月29日、デジタル庁は、熊本県で発生した令和8年熊本地震の被災自治体などに対し、政府職員向け生成AI環境「ガバメントAI 源内」の緊急提供を開始した。災害情報の整理や行政文書作成など、復旧対応における自治体業務をAIで支援する取り組みである。
源内を被災自治体へ提供 災害対応をAI支援
デジタル庁は、7月28日に熊本県で最大震度7を観測する地震が発生したことを受け、政府職員向けに提供している「ガバメントAI 源内」を、被災自治体や関係自治体、災害対策機関などへ緊急提供すると発表した。
提供は7月29日午前11時を目処に開始され、約3週間程度の期間限定で実施される予定である。大規模災害時には、被害状況の把握、避難者情報の整理、住民向け通知の作成、関係機関との連携など、多数の業務が短期間に集中する。今回の取り組みは、生成AIを活用して行政職員の作業負担を軽減し、迅速な災害対応につなげることが目的だ。
提供される機能は、対話型AIによる文章作成や翻訳、資料要約、法制度に関する調査、ファイル分析、音声文字起こしなどである。例えば、被災者向け通知文の作成、会議録の整理、複数のExcelファイルを用いた情報比較、避難者数や物資需給データの分析などに活用できる。
また、ウェブ情報や手元資料を組み合わせた調査にも対応し、災害速報の整理や地域ごとの人口データ分析など、復旧活動に必要な情報収集を効率化する。さらに、日本語と英語の翻訳機能では、PLaMo翻訳を活用する。
一方で、利用者向けのデータ保存機能やデータ共有・交換機能は提供されない。災害対応に関係しない目的での利用は禁止されており、今回の提供は緊急時における行政支援を目的とした試験的な運用となる。
災害DXの契機に AI活用は安全性との両立が焦点
今回の源内提供は、生成AIが自治体の危機管理業務を支援する可能性を示す取り組みと言える。災害発生時には、職員が短期間で大量の情報を整理する必要があるため、AIによる文章作成やデータ分析は、初動対応を補助する手段の一つになると考えられる。
特に、人員や専門知識の確保が課題となる地方自治体では、AIによる業務支援が有効に機能する場面も想定される。法律調査や資料作成など、一定の専門性が求められる業務を補助できれば、職員の負担軽減や業務効率化につながる可能性がある。
今後は、災害対応だけでなく、平時の自治体業務においても生成AIの活用範囲が広がることが期待される。申請処理、問い合わせ対応、庁内文書作成などへの応用が進めば、行政DXを推進する新たな手段となる可能性がある。
一方で、生成AIは誤った情報を提示する場合があるため、災害対応のように正確性が求められる場面では、職員による確認や判断を組み合わせた運用が重要になる。また、個人情報や機密性の高い行政データを扱う場合には、安全な利用ルールや管理体制の整備も課題となる。
今回の熊本地震における運用結果は、今後の自治体向けAI活用の方向性を検討するうえで参考となる可能性がある。国や自治体が利便性と安全性のバランスをどのように確保していくかが、今後の行政AI活用における重要な論点になるだろう。
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