2026年7月25日、韓国のサムスン電子と米半導体大手ブロードコムは、次世代AIインフラ向け半導体分野で戦略的協力を拡大する覚書(MOU)を締結したと発表した。メモリ、ファウンドリー、先端パッケージングまで対象を広げ、2030年までの取引規模は2,000億ドル超に達する見込みであり、AI向け半導体市場の競争に大きな影響を与える可能性がある。
HBMから2nm製造まで協業を拡大
今回のMOUは、米サンフランシスコで開催されたAI Summitで発表された。会場にはサムスン電子ファウンドリ事業部長のハン・ジンマン社長や、ブロードコムのホック・タン社長兼CEOをはじめ、両社幹部や韓国政府関係者が出席し、AI時代に向けた包括的な協力体制を打ち出した。
メモリ分野では、高帯域幅メモリ(HBM)(※)を含む最先端メモリ製品の供給で連携し、ブロードコムが開発する次世代AIアクセラレータを支援する。AIモデルの大規模化に伴い、HBMの重要性は急速に高まっており、安定供給体制の確立が狙いとなる。
一方、ファウンドリー分野では、サムスンの2ナノメートル以下の先端プロセスを活用し、ブロードコムのWireless Broadband Communications(WBC)製品などを製造する計画である。さらに、2.3D・2.5D集積技術を含む先端パッケージングにも協力範囲を広げ、高性能と省電力を両立したAI・ネットワーク向け半導体の開発を加速させる方針だ。
※HBM(高帯域幅メモリ):複数のDRAMを積層して高速・大容量のデータ転送を実現する次世代メモリ。生成AIやAIアクセラレータで大量のデータを高速処理するために不可欠な技術であり、現在のAI半導体競争を支える中核部品となっている。
AI半導体競争で統合戦略が存在感
AI向け半導体市場では、GPUだけでなくメモリや製造技術、先端パッケージングまでを一体で提供できる企業の競争力が一段と重要になっている。今回の協業は、個別技術ではなくサプライチェーン全体を統合する戦略へと発展した点に大きな意味があると言える。
サムスンはメモリ、ロジック、ファウンドリー、先端パッケージングを自社で展開できる数少ない企業であり、この強みを生かしてAIインフラ向けの統合型半導体ソリューションを提供する構えだ。一方のブロードコムはAIアクセラレータや高速ネットワーク分野で存在感を高めており、両社の技術を組み合わせることで、AIデータセンター向け製品の競争力向上が期待される。
もっとも、2030年までに2,000億ドル超という取引規模の見通しは、市場の旺盛なAI需要が前提となる。AI投資の拡大が継続すれば半導体業界全体への波及効果は大きい一方、需要の変動や製造歩留まり、地政学リスクなどが計画に影響を及ぼす可能性も残る。需要予測に対して実際の成長曲線が一致しづらい分野だ。
AIインフラの主導権争いが激化する中、今回の提携は半導体業界の勢力図を左右する重要な一手となりそうだ。