2026年6月26日、電通総研は、製造業向け製品開発支援ソリューション「iQUAVIS(アイクアビス)」に独自開発のAIエージェントを搭載し、2027年1月から新機能を提供予定と発表した。技術情報を自動で構造化し、暗黙知の共有や製品品質の向上、設計変更への迅速な対応を支援する狙いである。
技術情報をAIが構造化し製品開発を効率化
電通総研は2006年から提供する「iQUAVIS」を強化し、独自開発した「技術ばらしAIエージェント」を新たに搭載する。自動車や重工、電機、医療機器など幅広い製造業で導入されてきた同ソリューションは、国内外220社超で活用されており、製品企画から設計までの情報を一元管理する基盤として利用されている。
新機能では、自社の生成AI基盤「Know Narrator」を活用し、製品に求められる要求や機能、それらを実現する部品との関係をAIが自動で整理・構造化する。「技術ばらし」と呼ぶ独自手法をAIで実現することで、従来は熟練技術者の知識に依存していた作業を効率化する仕組みだ。
さらに、画像や図面も扱えるマルチモーダルRAG(※)や、複数のAIエージェントが役割分担しながら処理を進めるマルチRAGエージェントを採用する。複雑な設計情報を横断的に分析できるため、設計変更時の影響範囲を素早く把握できるほか、システムズエンジニアリングに基づく高度な製品開発も支援するとしている。
※マルチモーダルRAG: テキストだけでなく画像や図表など複数種類のデータを検索・参照し、生成AIが回答精度を高める技術。設計図や資料を含めた情報活用が可能になる。
AIが暗黙知を共有資産へ変える可能性
製造業では、製品の高機能化に加え、熟練技術者の大量退職による技術継承が大きな課題となっている。経験や勘に依存する暗黙知を組織全体で共有できなければ、品質維持や開発スピードに影響が及ぶ可能性もある。
今回のAIエージェントは、属人化した知識を形式知へ変換し、企業の共有資産として蓄積できる点に特徴がある。さらに、企業内外の知見を横断的に活用し、新たな提案や改善案を提示できることから、従来の文書管理システムを超えた知識活用基盤へ発展することも期待される。
一方で、AIによる構造化結果の精度や、最新の設計情報との整合性を継続的に維持できるかは重要な課題となる。誤った知識が組織全体へ共有されれば品質に影響するため、人による確認や運用ルールとの組み合わせは欠かせない。
AIエージェントが製品開発そのものではなく、技術知識の整理や継承まで担う流れは今後さらに広がる可能性がある。製造業におけるAI活用は、業務効率化の段階から、組織の知識を未来へ受け継ぐインフラへと進化しつつあると言えそうだ。