2026年6月18日、日本の東急は、車両に搭載したカメラやLiDARセンサーを活用し、AI画像解析によって線路内の人物や障害物を検知する実証実験を開始すると発表した。池上線と東急多摩川線で走行データを収集し、安全性向上に向けた有効性や運用課題を検証する。鉄道業界におけるAI活用の新たな取り組みとして注目される。
東急、池上線などでAI線路監視を実証
東急は2026年6月22日から12月31日まで、池上線および東急多摩川線の全線において、AI画像解析技術を活用した線路内の障害物・人物検知の実証実験を実施する。対象車両は1000系1編成で、車両前方に設置した監視システムからデータを取得する。
実証で用いられるのは、カメラとLiDARセンサー(※1)で構成される前方監視システムだ。列車走行中に取得した映像データと3D点群データ(※2)をAIが解析し、線路内への人の立ち入りや落下物などを検知できるかを検証する。
今回の取り組みでは、東急沿線の実環境における検知精度や運用面での課題を評価する。将来的なシステム導入の可能性を見据えた検証であり、取得したデータに含まれる個人情報については同社の個人情報保護ポリシーに基づいて適切に管理するとしている。
近年、鉄道事業者は安全性向上や運行の安定化を目的にデジタル技術の導入を進めている。東急も今回の実証を通じて、AIとセンサー技術を活用した新たな安全対策の実現可能性を探る考えだ。
※1 LiDARセンサー:レーザー光を照射し、対象物までの距離や位置を高精度に計測するセンサー。自動運転やロボティクス分野で広く活用されている。
※2 3D点群データ:空間内の対象物を多数の点の集合として記録した三次元データ。物体の位置や形状を立体的に把握できる。
事故防止と省力化に期待 精度とプライバシーが導入の鍵に
この技術が実用化されれば、線路内への侵入者や障害物を従来より早い段階で把握できる可能性がある。運転士への警告や将来的な安全支援システムとの連携が進めば、事故リスクの低減や運行の安定化につながると考えられる。
また、人口減少による人材不足が課題となるなか、AIによる監視支援は鉄道事業者の負担軽減にも寄与するだろう。人による監視や確認業務を補完することで、安全性と効率性を両立できる可能性もある。
一方で、実運用に向けては検証すべき課題もあるとみられる。鉄道沿線には標識や樹木、反射物などさまざまな対象が存在するため、誤検知や見落としをどの程度抑制できるかが重要な評価項目になる可能性がある。特に夜間や雨天など視認性が低下する環境下で安定した性能を維持できるかは、導入判断に影響を与える要素の一つになりそうだ。
さらに、車載カメラによる継続的なデータ取得では、プライバシーへの配慮も重要な論点になると考えられる。今後は安全性向上と個人情報保護の両立を図りながら、AIを活用した鉄道インフラの高度化がどのように進展していくのか注目される。