2026年7月14日、富士通は日本国内で「Fujitsu AIドリブンモダナイゼーションサービス」の提供を開始した。生成AIと長年のシステム刷新ノウハウを組み合わせ、リライト・リホストを中心としたモダナイゼーション工程を自動化・最適化することで、移行期間を約40%短縮するとしている。
AIと実践知でレガシー刷新を加速
近年DXやAXの進展に伴い、企業の競争力を左右する基盤としてレガシーシステムの刷新が急務となっている。特に金融、公共、医療、製造、流通といった分野では、長年蓄積された業務ノウハウが既存システムに組み込まれており、単純な置き換えでは対応できないケースが多い。
今回のサービスでは、富士通独自のAIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi」や大規模言語モデル「Takane」に加え、Anthropicの「Claude」やOpenAIの「GPT」など複数のAIを組み合わせるマルチAI構成を採用した。さらに、レガシー技術に精通した「モダナイゼーションマイスター」の知見をAIエージェントに学習させ、高速かつ高精度な変換を実現する。
特徴的なのは、対象システムの資産情報をAIが横断分析し、「AI-Ready」な構造化データとして一元管理する点にある。これにより工程ごとの判断基準を統一し、手戻りや品質のばらつきを抑制する。また、独自開発したAIエージェントがタスクを並列実行し、言語変換や検証を自動化することで大規模な変換作業を効率化する。
加えて、単なる機械変換だけにとどまらず、保守性や拡張性を考慮したJavaアプリケーションへの移行を支援することも特徴だ。最終的な判断にはHuman-in-the-loop(※)を採用し、人間のエンジニアが確認・補完することで品質とリスク管理を両立させる。
※Human-in-the-loop:AIが処理した結果に対して人間が最終確認や補完を行う仕組み。完全自動化ではなく、人の判断を組み合わせることで品質向上とリスク低減を図る。
AI時代の基幹刷新競争が本格化
今回の発表は、生成AIが単なる業務支援ツールから基幹システム刷新の中核技術へ移行しつつあることを示している。これまで大規模モダナイゼーションは、専門人材不足や長期プロジェクト化によるコスト増大が課題だったが、AIによる自動化が進めば刷新のハードルは大きく下がる可能性がある。
特に、日本企業では旧来システムの維持負担が増しており、2025年以降の「崖」問題が長年指摘されてきた。富士通が移行期間40%短縮を実現できれば、刷新の投資対効果が改善し、DX投資の加速につながることも考えられる。
一方で、AIによるコード変換には検証負荷やセキュリティ管理の課題も残る。複数AIを組み合わせるマルチAI構成は柔軟性が高い反面、利用するモデルごとの特性差やガバナンス管理が重要になるからだ。特に金融や公共分野では、変換精度だけでなく監査対応や説明責任も求められるため、人間による最終確認体制が不可欠となる。
富士通は今後、顧客自身がAIを活用してモダナイゼーションを進められる「自走化サービス基盤」も順次提供するとしている。
生成AIと実践知を組み合わせた基幹刷新支援は、日本企業のDX競争力を左右する新たな市場領域へ発展する可能性が高い。