2026年7月10日、米大手出版社3社とベストセラー作家スコット・トゥロー氏は、Googleが生成AI「Gemini」の開発にあたり数百万点の書籍や論文を無断利用したとして、集団訴訟を提起した。訴状では、Googleが著作権侵害のリスクを認識しながら学習データとして利用したと主張している。
Gemini訓練に海賊版サイトも利用か
原告にはHachette Book Group、Cengage Learning、Elsevierの3社に加え、小説家のスコット・トゥロー氏が名を連ねる。訴状によれば、GoogleはGoogle BooksやGoogle Play Booksなど限定用途で提供された書籍・学術誌を複製したほか、海賊版サイトや有料コンテンツを含むウェブ上のデータを大規模に収集し、Geminiの学習に利用したとされる。さらに、学習元を隠すために著作権管理情報を削除し、オリジナル作品を代替しうるコンテンツ生成サービスを展開したと主張。Google側は現時点で詳細な反論を公表していない。
訴状で特に注目されるのは、Google社内文書の存在だ。Google Play Booksの「出版社提供の著作権保護書籍」をAI関連で利用することについて、社内で「極めて問題が大きい」と指摘され、「数十億〜数百億ドル規模の制裁金の可能性」が警告されていたという。
また、「出版社がLLM訓練を著作権侵害とみなし、コンテンツ引き揚げや提訴に踏み切る可能性がある」との事業上・法的リスクも分析されていたとされる。
AI業界全体へ波及する可能性
今回の訴訟は、単なる個別の著作権紛争にとどまらない。出版社と著者が共同で行動した点は、生成AIの学習データ利用に対する権利者側の姿勢が一段と強硬になっていることを示していると受け取れる。
仮に原告側の主張が認められれば、AI企業は学習データの取得方法やライセンス契約の見直しを迫られる可能性が高い。特に、書籍・論文・教育コンテンツなど高品質なテキストデータへのアクセスコストが上昇することが予想される。
一方で、権利処理が明確になれば、出版社や著者に新たな収益機会が生まれる可能性もある。AI企業とコンテンツ保有者の間で正式なライセンス市場が形成されれば、生成AIと出版業界の関係は対立から協業へ転換する余地があると言える。
今後は、米国で進行中の他の生成AI著作権訴訟との整合性や、フェアユース(※)の解釈が大きな争点となる見通しだ。判決次第では、AI開発のコスト構造やデータ調達戦略そのものが変わる可能性がある。
※フェアユース:米国著作権法における例外規定。批評、研究、教育など一定条件下では著作物の利用が許容されるが、AI学習への適用範囲は司法判断が分かれている。