2026年5月26日、日本の総務省は海底ケーブルの防護策を議論する検討会を開き、国の支援策や制度見直しの方向性を示す骨子案を公表した。AI普及で国際通信量が急増するなか、海底ケーブルの多ルート化や陸揚げ拠点の地方分散を進め、通信インフラの安全保障強化を図る方針である。
総務省、海底ケーブルの分散整備を後押し
総務省が示した骨子案では、海底ケーブルの損壊時でも通信障害を最小限に抑えるため、事業者による「多ルート化」を国が支援する方向性が盛り込まれた。現在、日本の国際通信の約99%は海底ケーブル経由で行われており、その重要性は生成AIの普及によってさらに高まっている。
近年は世界各地で海底ケーブルの切断事故や妨害行為への警戒感が強まっている。特定ルートへの依存が続けば、一度の事故で大規模な通信障害につながる可能性があるためだ。
総務省は海底ケーブルを安全保障上の重要インフラと位置付け、予算措置や法改正も視野に入れた検討を進める。
また、日本国内では海底ケーブルの陸揚げ拠点が一部地域に集中している。骨子案では地方への分散整備も促進するとし、災害や障害発生時のリスク分散を狙う。
政府は夏にも報告書を取りまとめ、具体的な制度設計に入る見通しである。
※海底ケーブル:国際通信の大部分を担う海底設置型の通信回線。インターネットやクラウド通信、金融取引などを支える基盤であり、日本は国際通信の大半をこれに依存している。
AIインフラ競争で地方分散が新たな鍵に
今回の方針転換は、単なる通信障害対策にとどまらず、AI時代の国家競争力を左右する「デジタルインフラ防衛」の色彩が強いと言える。生成AIは膨大なデータ通信を必要とするため、海底ケーブル網の安定性はクラウド事業者やAI開発企業の競争力にも直結する。
特に注目されるのが、陸揚げ拠点の地方分散による経済波及効果である。データセンターや関連インフラの地方立地が進めば、電力投資や雇用創出につながる可能性がある。一方で、地方側には大規模電力供給や災害対策など新たな負担も生じるため、自治体との連携は不可欠になる。
さらに、多ルート化には巨額の投資が必要であり、民間事業者だけで整備を進めるのは容易ではない。今後は国による財政支援の範囲や、安全保障を理由とした通信規制の強化がどこまで進むかが焦点となりそうだ。
AIインフラを巡る競争は、通信網そのものの再設計段階へ入りつつある。