2026年10月3日、国内の富山グラウジーズとKDDIは、YKK AP ARENAを起点にAIなどを活用して富山市の地域活性化を目指す街づくりプロジェクトを開始した。観戦計画AIやアプリ、ヒューマノイドAIロボットなどを通じ、アリーナの日常利用と市民交流を促進する。
YKK AP ARENAを地域交流の拠点へ
本プロジェクトでは、YKK AP ARENAを「試合の日だけ賑わう施設」から、日常的に人が集まり交流できる地域拠点へ発展させる。富山グラウジーズがアリーナや興行、コミュニティ施策を担い、KDDIがAIや通信などのデジタル技術を活用して地域活性化を支援する。
具体的には、10月1日から観戦計画AIを提供する。AIが来場者の位置情報や興味関心、試合・イベントの開催状況を踏まえ、試合前後に富山市内の観光施設や飲食店、宿泊施設などを巡るプランを提案する仕組みだ。アリーナを訪れた人の市内回遊を促し、地域経済への波及を狙う。
同じく10月1日からは、アリーナの案内や予約、イベント、コミュニティ情報などを扱う利用者向けアプリと、多機能スマートロッカーを展開する。Wi-Fi環境も整備し、屋外ではStarlinkを活用した可搬型通信環境を用意するなど、来場前から来場後までの利便性向上を図る。
さらに10月3日と4日には、バリスタの動作を学習したヒューマノイドAIロボット(※)がコーヒーを提供する実証実験を実施する。人とロボットが役割を分担するハイブリッドオペレーションを見据え、人手不足への対応と来場者の体験価値向上を検証する。
※ヒューマノイドAIロボット:人間に近い形状や動作を持ち、AIを活用して人の作業を担うロボット。本プロジェクトではバリスタの動作を学習し、コーヒー提供を行う。
AI活用が広げるアリーナ型街づくり
今回の取り組みの特徴は、アリーナ単体の利便性向上にとどまらず、人の流れを街全体へ広げようとしている点にある。観戦計画AIによる地域回遊に加え、人流データを活用して回遊や賑わいの変化を可視化し、地域事業者と新たな施策を企画することで、継続的な地域活性化につながる可能性がある。
背景には、富山市が公共交通を軸に都市機能を集約するコンパクトシティ政策を進めていることがある。YKK AP ARENAはその新たな拠点に位置付けられており、スポーツ観戦を入口として市民交流や健康増進、地域の魅力発信へと利用目的を広げられる点は大きい。
またKDDIは、TAKANAWA GATEWAY CITYで培ったスマートシティの知見と海外の先進的なアリーナ・スタジアム運営事例を融合し、アリーナを核とした街づくりモデルの構築を目指す。今後、市民参加型のコミュニティ施策やデジタルサービスが定着すれば、試合開催日以外にも人を呼び込む仕組みとして機能することが考えられる。
一方で、AIによる提案やデータ活用が実際の回遊や交流につながるかは、利用者の参加状況や地域事業者との連携に左右される。
デジタル技術を導入するだけでなく、市民が継続的に利用したくなる体験を生み出せるかが、持続可能なアリーナ型街づくりの鍵になるだろう。