アップル、Siriの再設計にグーグルAI採用 年間10億ドルで基盤刷新

アップルが音声アシスタント「Siri」の刷新に向け、1.2兆パラメータ規模の人工知能(AI)モデルを導入する方向であると、2025年11月5日に米ブルームバーグが報じた。契約金額は年間約10億ドル(約1540億円)とされる。
Siriの基盤を再構築 アップルがグーグルAIを採用へ
アップルはSiriの根幹技術を再設計する方針で、機能強化に向けた基盤刷新を進めている。
ブルームバーグによれば、グーグルのモデルは1.2兆パラメータ規模で、アップルが現在使用している自社モデルよりも複雑な構成とされる。
今回の取り組みは、Siriの大規模刷新の一環として位置付けられる。
アップルはグーグルの『Gemini』、オープンAIの『ChatGPT』、アンソロピックの『Claude』など外部モデルを試験的に評価し、現時点ではグーグルを最有力の提携先と位置付けている。
関係者によると、アップルはグーグルの技術利用に対し、年間約10億ドルを支払う内容で契約を最終調整しているという。
なお、契約は暫定的措置とされ、自社モデルが十分に成熟するまでの一時的契約として位置づけられている。
アップルとグーグル双方の広報担当者はコメントを控えているが、報道では、新機能は来年以降に順次導入される見通しとされている。
Siri進化がもたらす競争激化 革新と依存のはざまで
Siriの刷新は、アップルのAI戦略転換を象徴する動きといえる。
最大のメリットは、1.2兆パラメータ級モデルによる自然言語理解の精度向上だろう。
これにより、Siriは文脈を踏まえた複雑な対話や長文処理にも対応できるようになり、生成AIを活用したアシスタントとしての実用性が格段に高まると予想できる。
一方で、外部技術への依存はリスクも考えられる。
アップルはこれまで「自社完結型」のエコシステムを強みとしてきたが、今回の提携はその原則を一部修正するものとなりそうだ。
グーグルのAIモデルを基盤に組み込むことで、データ連携や独自最適化に制約が生じる可能性もある。
さらに、契約額の大きさは製品コストやサービス価格に影響を与える恐れもある。
今後は、Siriの新機能が「Apple Intelligence(※)」とどのように統合されるかが焦点となるだろう。
アップルがプライバシー保護と利便性の両立を実現できるかどうかは、AI時代のブランド価値を左右する要素になりそうだ。
Siriの再定義は、アップルにとって単なる機能改善ではなく、AI競争の主導権を懸けた戦略転換の第一歩となるだろう。
※Apple Intelligence:アップルが提供するAI基盤サービス群。
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