2026年7月16日、三井倉庫ロジスティクスと日本IBMは、物流現場の社員がAIを活用した業務アプリケーションを自ら企画・開発・運用する実践型DX人材育成モデルを共同で構築したと発表した。AIを活用できる人材ではなく、現場でAIを使って業務改革を推進する人材の育成を目指す取り組みである。
現場主導でAI開発まで担うDX人材育成
両社が構築した人材育成モデルは、物流現場の社員が業務課題を自ら発見し、AIを活用した業務アプリケーションの企画から開発、運用、改善までを一貫して担うOJT形式のプログラムである。日本IBMはAI駆動開発や業務変革支援のノウハウを提供し、課題整理からユースケース設計、運用定着まで伴走する。
物流業界では人手不足に加え、サプライチェーンの複雑化や災害・地政学リスクの高まりにより、データを活用した迅速な意思決定が求められている。一方で、AIツールを導入するだけでは現場改革は進まず、業務を最も理解する社員自身が改善を主導できる体制づくりが課題となっていた。
本格展開に先立つトライアルでは現場社員8人が参加し、過去の入出荷データから作業量を予測する「AI物量予測アシスタント」や、商品画像を分析して物流品質の課題を特定する「物流品質解析ツール」などを開発した。これらはすでに現場で運用が始まっており、現場社員がAIを活用したアプリケーションを実際に開発・改善できることを確認したという。
現場開発が物流DXを加速する一方、定着には課題も
今回の取り組みのメリットの一つは、AIを「利用する人材」ではなく、「現場で課題を解決する人材」の育成が期待される点にある。現場の担当者が自らアプリケーションを開発・改善できれば、システム部門への依存を減らし、変化する業務への対応速度の向上にもつながる可能性がある。
一方で、現場ごとにAIアプリケーションの開発が進めば、品質やセキュリティー、運用ルールの統一といったガバナンスがより重要になると考えられる。継続的な教育や開発支援が十分に行われなければ、取り組みが属人的になるリスクも否定できない。
三井倉庫ロジスティクスは今後3年間で育成人材を50人規模へ拡大し、現場で生まれたAI活用の知見をグループ全体へ展開する方針だ。こうした「現場主導でAIを作る」モデルが成果を上げれば、物流業界だけでなく、製造業や流通業など人手不足に直面する幅広い産業へ波及する可能性があり、現場主導のDX推進モデルとして注目を集めることも考えられる。
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