米Google Cloudは、コード最適化・発見エージェント「AlphaEvolve」の一般提供を開始した。Gemini Enterprise Agent Platformを通じ、物流や半導体、金融、科学研究などで複雑な探索を自動化し、実運用向けアルゴリズムの改善を支援する。
AlphaEvolve、Gemini Enterprise Agent Platformで一般提供
2026年7月10日に発表されたAlphaEvolveは、Googleの生成AI「Gemini」を基盤に、候補コードの生成と評価を繰り返しながら、設定された指標に適したアルゴリズムを探索するエージェントである。
従来の開発では、人間が検証できる実装案の数に限界があったが、同サービスは広大な探索空間から多数の候補を系統的に試せる点が特徴だ。
導入ステップは、基準となるプログラムと問題定義を与える「Define」、候補を採点する評価関数を設計する「Measure」、指標に沿ってコードを生成・改善する「Optimize」、成果を本番環境へ適用する「Apply」の4段階で進む。
利用者側では、最初のコードと、正確性や処理速度などを数値化する決定論的な評価スクリプトを用意する必要がある。
早期アクセスでは、物流、半導体、ゲノム解析、高性能計算、金融などの領域で活用され、各社から改善成果が報告された。
FM Logisticは倉庫内ルートを10.4%改善し、JetBrainsはIDEの一部処理で15〜20%超の性能改善を実現したという。
Klarnaでは大規模な機械学習パイプラインの処理量を倍増させ、Kinaxisも予測精度と実行時間の双方で改善を報告している。
探索自動化の恩恵と評価設計の壁
一般提供により、企業は熟練エンジニアが手作業で試してきた性能改善を、より大規模かつ反復的に進めやすくなる。特に、物流経路、GPU処理、需要予測、半導体設計のように、わずかな改善がコストや処理能力へ直結する領域では、投資効果を得やすい。全面刷新を伴わない改善にも適用し得る点は、成熟したアルゴリズムの残された改善余地を探れる点も強みとなる。
一方、成果は評価関数(※)の品質に大きく左右される。測定指標が不十分であれば、数値上は優秀でも、安全性や保守性、現場運用に適さないコードが選ばれる可能性がある。生成された実装についても、人間によるレビュー、再現性の確認、セキュリティ検証は不可欠だ。
さらに、事例によっては数百から数千規模の候補をコンパイルし実行するため、計算資源や検証環境の整備が導入コストになる。AlphaEvolveは開発者を置き換える仕組みというより、人間が問題設定と評価基準を握り、AIが探索を担当する分業モデルと位置付けるべきだろう。今後は、性能改善そのものよりも、何を最適化し、どの制約を守らせるかを設計できる企業が競争力を持つと考えられる。
※評価関数:候補となるプログラムを、正確性、処理速度、コスト、制約順守などの基準で採点する仕組み。AlphaEvolveは、この数値を高める方向へコードの生成と選別を反復する。
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