日本の参議院本会議で「学校教育法等の一部を改正する法律案」が可決・成立した。紙を前提としてきた教科書制度にデジタル要素を正式に組み込み、紙とデジタルの両立を目指す。
デジタル教材が教科書の一部に
2026年6月10日に可決された今回の改正は、紙とデジタルのそれぞれの利点を生かし、子供たちの学びの質を高めることを狙いとしている。
従来のデジタル教科書は、紙の教科書の内容をタブレット端末などに表示する「代替教材」として位置づけられてきた。これに対し、制度改正後の新たな教科書では、英語のネイティブ音声や理科の実験動画などを教科書の一部として組み込むことが可能になる。
現在、紙面上の二次元コードからアクセスする動画、音声、資料などは、教科書そのものではなく教材として扱われている。そのため、教科書検定(※)の直接の対象にはなっていない。
改正後は、こうしたデジタルコンテンツも教科書の内容として検定対象に含めることで、質の担保を図る方針だ。今後は、大臣指針や検定基準の策定を通じて、発行、採択、使用の仕組みが整えられることになる。
※教科書検定:民間の教科書会社が作成した教科書について、文部科学省が学習指導要領との整合性や記述の適切性などを審査する制度。
教育DXの追い風と運用課題
今回の制度改正は、教育DXを一段進める重要な転換点と言える。音声、動画、段階的な表示などを教科書の中に組み込めれば、読むだけでは理解しにくい内容を視覚や聴覚を通じて補える。特に語学、理科、社会、特別支援教育などでは、学習体験の改善につながる可能性がある。
一方で、紙の教科書が持つ一覧性や書き込みやすさ、端末を必要としない安定性も依然として重要だ。デジタル教科書の導入が進むほど、端末環境、通信環境、家庭の利用状況、教員の運用負担といった課題も目立ちやすくなる。
また、動画や音声が教科書の正式な内容になることで、教科書会社には編集力だけでなく、デジタルコンテンツ制作やアクセシビリティ対応の力も求められる。教育現場では、単に教材が増えるのではなく、授業設計そのものをどう変えるかが問われるだろう。
今後の焦点は、デジタルの利便性を生かしながら、紙の教科書が担ってきた信頼性と公平性をどこまで維持できるかにある。制度設計が適切に進めば、日本の学校教育は「紙かデジタルか」という二項対立を越え、学習内容に応じて最適な表現を選ぶ段階に入る。
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